人口減少と高齢化が進む日本において、とりわけ地方においては都市部への若者の人口流出が顕在化しており、地域社会の活力低下が問題となっています。本来、地域には、それぞれの土地にある資源を生かし、卓越した技術でその価値を生み出してきた地場産業が存在しました。しかし、その多くは、日本経済の停滞やグローバル化が進む中で競争力を失い、多くの地場産業が衰退の一途を歩んでいます。この現状に対して、地方創生の取り組みでは、地の利を生かし、高付加価値な製品やサービス、技術を生み出すなどのイノベーションが求められており、イノベーションが核となり、企業が育つことで地域経済が活性化し、雇用促進や人口流入を促し、地域の活力を再生することを目指すことが必要とされています。
このような中、自然共生型産業研究所は、地域の資源を生かした自然共生型産業を生み出し、その産業を育てていくことが一つの解決策になると考えています。自然共生型産業とは、アグリ・バイオ・ヘルスケア・環境分野に代表されるように地域の自然環境や技術、農林水産品、歴史、文化などの地域資源を最大限に活用した産業を表します。さらに、一過性ではない持続可能な産業発展のためには、10年後・20年後を担う次世代の育成が重要であると考えます。若者が自分の地域にある資源を深く理解することで新しい研究開発を推進し、そこに、現在技術をもって事業を推進している世代が技術を伝え、ともに新しい産業をつくりあげていく、地域の未来をつくるエコシステムの構築が必要です。
研究所の名前に掲げた「共生」は、自然と人との「共生」だけではなく、地域に住む方々の世代間の「共生」を促すことも意味しています。地域の自然を生かした新たな産業を生み育てる、そして未来を担う次世代を育成する、この両輪を回していくことが地域活性化に資するという研究をモデル拠点である熊本県から発信してまいります。
2016年2月に、熊本県、株式会社肥後銀行、国立大学法人熊本大学、一般社団法人熊本県工業連合会と熊本県における次世代ベンチャーの発掘と育成に向けた連携協定を締結しました。ここでは、自然共生型産業の創出に向けて、次世代技術と情熱をもって熊本から世界を変えようとする起業家を発掘・育成する創業支援プログラム「熊本テックプランター」を運営しています。県内の資源や大学技術を活用したバイオ、農林水産、ヘルスケア、ものづくり等の分野で事業化を目指すベンチャー・研究者等のハンズオン支援に力を入れ、グローバルに活躍するメガベンチャーの創出を目指し、現在は、2017年度のエントリーを募集しています。
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2016年12月に水俣市との連携により、研究活動に取り組む中高生のための学会「サイエンスキャッスル」を九州地方で初めて開催し、300名を超える参加者が集まりました。2017年度も環境研究拠点を目指す水俣市において、持続可能な科学技術の発展の土台となる「環境」をテーマに開催する予定であり、熊本県における次世代育成への貢献を目指します。
サイエンスキャッスル九州大会2016年実施報告はこちら
2016年度は熊本大学の大学院生5名をインターンシップ生として受け入れています。インターンシップ生が次世代育成や創業支援等の活動に参加することで、リーダーシップやコミュニケーション、プレゼンテーションといったスキルを身につけ、社会課題の解決に向けて主体的に行動できる人材へと成長することを促します。2017年度は、リバネスが運営するトレーニングプログラム「サイエンスブリッジリーダー育成講座」を実施する予定であり、科学技術を活かして地域で活躍する研究人材の育成に取り組みます。
Yuji Fukuda
自然共生型産業研究所 所長
麻布大学を獣医学部動物応用科学科を卒業後、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科にて修士号を取得。その後、畜産飼料の卸販売を行う企業の関連養豚場にて1年半、分娩、肥育を担当。肥育部門では新農場の立ち上げにおいて、リキッドフィーディングとオガ粉式循環農法に取り組んだ。2008年に株式会社リバネスに転職し、沖縄事業所に赴任。沖縄の自然環境を生かした科学教育の実践、地域の未利用資源の飼料化に取り組み、リバネス初のブランド豚「福幸豚」を開発した。その後もパインアップルや泡盛蒸留粕などの未利用資源の飼料化に取り組むほか、山羊経営モデルの策定に関する研究など、畜産分野における取組を行ってきた。2016年9月より熊本に赴任し、現職に至る。