研究者だからできる会社経営 株式会社リバネス丸幸弘、12年間のチャレンジ

研究者だからできる会社経営 株式会社リバネス丸幸弘、12年間のチャレンジ

丸 幸弘2002年、理工系の大学生・大学院生15人で立ち上げた株式会社リバネスは、今年創業してから12年目を迎える。出前実験教室の運営をはじめ、高校生向け科学雑誌『someone』の発行、若手研究者支援制度「リバネス研究費」、そして店産店消の「植物工場」、ブランド豚「福幸豚」の開発まで、世の中に新しい仕組みを提案をするイノベーションベンチャーだ。創業者の丸幸弘は東京大学大学院農学生命科学研究科で博士号を取得し、「科学技術の発展と地球貢献を実現する」という理念を掲げ、現在も最前線で研究者集団を率いてビジネスに挑戦する異色の経営者だ。

Q1どうして理工系ばかりで起業をしたのか?

もともと自分の研究所を作って、世の中に新しいものを生み出し続けたいと思っていました。大学に残って研究を続けても、本 当に好きな研究が自由にできるようになるには、長い下積み時代が必要です。でも、僕は今すぐにでもいろんなチャレンジがしたかった。起業をしたかったかというより、自分の研究をすぐにやるために、会社というかたちが必要だっただけなのです。起業はその目的達成のためのプロセスにすぎません。いまは、生物工学研究所、ロボット工学研究所、農業技術研究所、環境生態学研究所、そして宇宙研究所の5つのラボを自社で運営し、新しい知識を生み出しています。

Q2なぜ「サイエンスを伝える」ことがビジネスになるのか?

リバネスでは、「サイエンスをわかりやすく伝える」をビジネスにしています。最初は、「最先端の科学を集めて、外に向けてわかりやすくアウトプットしたら何が起こるのか」という社会的実験をしていただけ。それが本当にビジネスになるかなんてわからなかった。でも、たとえば最先端の科学を小中高の学校に届ければ教育事業になるし、企業の研究所に持ち込めば新しい研究の種になる。経営者に伝えればきっと経営の指針を作るための情報になる、といったように、行動し研究をしていたら偶然ビジネスになったのです。今では「サイエンスをわかりやすく伝える」ことが、新しいビジネスを生み出し、世界を豊かにするプラットフォームになると確信しています。2013年には、遺伝情報の解析をビジネスにする会社の立ち上げをサポートしましたが、そういった技術が社会に浸透していくためにも、ますますサイエンスの理解が必須になってくると思います。

Q3研究者ばかりでビジネスにチャレンジする強みは何か?

僕は、ビジネスにおいて、イノベーション(Innovation)を起こすために必要な新しいしくみ「QPMIサイクル」を提唱しています。世の中の課題(Question)を見つけ、個人がその課題に対して情熱(Passion)をかたむけ、信頼できる仲間たちと共有できる目的(Mission)に変えて、解決に取り組むこと。そして、QPMIサイクルの原動力となるのは、「問いに対して学ぶ」という姿勢と知識です。実は、これは、ビジネスの現場だけではなく、研究者であれば誰でも日々やっていることなのです。つまり、研究者はイノベーションを起こすビジネスパーソンとして必要な要素を既に身につけているといえます。私は、研究者こそ、ビジネスの世界でも活躍できると信じています

丸幸弘プロフィール

株式会社リバネス代表取締役CEO。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。リバネスを理工系大学生・大学院生のみで2002年に設立。日本初の民間企業による科学実験教室を開始する。中高生に最先端科学を伝える取組みとしての「出前実験教室」を中心に200以上のプロジェクトを同時進行させる。2011年、店産店消の植物工場で「グッドデザイン賞2011ビジネスソリューション部門」を受賞。2012年12月に東証マザーズに上場した株式会社ユーグレナの技術顧問や、小学生が創業したケミストリー・クエスト株式会社、孤独を解消するロボットをつくる株式会社オリィ研究所、日本初の大規模遺伝子検査ビジネスを行なう株式会社ジーンクエストなど、15社以上のベンチャーの立ち上げに携わるイノベーター。

科学の大原則で、ビジネスを変える。全ての研究者に贈る本。

発刊によせて
p27_maru_book数々の革新的なビジネスをプロデュースし、自社内では「出前実験教室」など200以上のプロジェクトを同時進行させながら、新しいビジネスを生み続ける。社員全員が理系の博士号or修士号を取得しているという異色の研究者集団「リバネス」。すべての科学者が実践している研究過程こそ、実は、ビジネスで革新を起こすために不可欠な要素なのです。その過程を「QPMIサイクル」としてまとめ、個人と組織が応用する方法について初公開します。 「一人ひとりの社員が強い「熱」(passion)を持って動いてぶつかり、互いに化学反応を起こし合う状態を集団化することで、世界を変えるイノベーション企業になれる」 ベンチャー起業家、社内ベンチャー・新規事業立ち上げに携わる人、中小企業の経営者、自分の研究成果を活かす方法を模索する学生まで、広く読んでいただきたい一冊です。

『世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』
〜科学者集団リバネスのイノベーションを起こすしくみ〜

<目次>

  • 第1章科学者集団のベンチャー企業リバネス
  • 第2章「QPMI」〜イノベーションを起こす魔法のしくみ〜
  • 第3章アイデアをビジネスに変えるしくみ
  • 第4章イノベーションを生む「組織」の作り方
  • 第5章イノベーションを生む「社内制度」

*書籍に関する問い合わせ先 日本実業出版社・編集部今野良介Tel:03-3814-5161Fax:03-3814-2971E-mail:[email protected]
*講演・セミナーに関する問い合わせ先 株式会社リバネス松原尚子Tel:03-5227-4198Fax:03-5227-4199E-mail:[email protected]