研究室は、部室です。|大窪 章寛
東京工業大学 生命理工学部 助教
目には見えない極小の分子を,まるでプラモデルをいじるような感覚で反応させ,組み立てていく。自分のアイデアで,新しい反応を起こさせては,でき上がったかたちを見てみるのが楽しくて,大窪さんは飽きることなく10年間研究を続けてきた。
薬になるDNA を合成する
大窪さんは,DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)を人工的につくる「核酸合成」の反応を研究している。生物のからだの中では,DNAが持つ遺伝情報をRNAにコピーし,その情報をもとにタンパク質をつくるという反応が常に起きている。その中で異常な反応が起こることで病気になることもわかってきており,人工的に合成した核酸を使って治療を行う研究も進められている。たとえば,異常なRNA にぴったりと結合するDNAを細胞内に入れることで,標的の異常RNA の働きを止める「アンチセンス法」もそのひとつだ。核酸を使った薬は,非常に高い治療効果があると期待されている。しかし,もし標的以外のRNAに結合してしまったら,副作用も重大なものになる。それを回避するべく工夫を加えた核酸を合成するのが,大窪さんの研究だ。
パワフルな研究室
合成反応はアセトニトリルやクロロホルムといった有機溶媒や水の中で進められる。どのような材料を,どのような濃度で,何時間反応させるか。少しずつ条件を変えながら,トライアンドエラーをくり返して目的の核酸の合成を目指す。反応全体にかかる時間は1,2 日だ。反応の結果どのようなものができたのか,毎日のように解析しては次のアイデアを出して,また実験する。その過程で今まで見たこともない反応を目にすることができるというのも,研究の魅力のひとつだ。大窪さんは自らの研究室を「まるで体育会系の部活のようです」と語る。深夜まで研究するのが当たり前,失敗をしても「気合いだ!」というような,パワフルなメンバーたち。そんな仲間とともに,大窪さんはこれからも研究を楽しみながら続けていく。(文・周藤瞳美)
大窪 章寛(おおくぼ あきひろ)プロフィール:
1976年生まれ。1999年東京工業大学生命理工学部生命理学科卒業。2004年,科学技術振興機構博士研究員。また,2004年より現職。理学博士。
http://www.bio.titech.ac.jp/out/information/grad/ls/ls-03-sekine-seio.html