想いがロボットを動かす|島田 明
芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 島田 明教授
国際会議に参加中,島田さんの携帯電話が鳴った。「ついにできました!」という学生からのメールだ。泣くほど難しい解析や設計を経て,ロボットがやっと自分の思い通りの動きをしてくれたという。島田さんにとって,学生と一緒にロボット完成の喜びを分かち合えるのは,嬉しい瞬間だ。
究極のロボットモーションをデザインする
島田さんは「こんな動きができるロボットがあったら役に立つのでは?」という気持ちから,今までにない動きをするロボットをデザインしている。島田さんの研究室の学生は,ひとりひとつずつ,それぞれ違ったロボットをつくっている。たとえば,自動的に障害物をよける飛行船や,なめらかに動く内視鏡など。そのひとつ,高さ30cm,横15cm,奥行15cmほどの金属の箱に2つの車輪が付いただけのロボット(写真右)は,支えがないと倒れてしまうが,スイッチを入れると自動的にバランスをとって前に後ろに動き出す。私たちが手のひらに棒を立たせて,前後にバランスをとるような動きだ。ロボットに内蔵されたセンサーが傾きを感知し,電圧を変化させ,モーターの動きが変わる。すると傾きが変化し,センサーがそれを感知する…ということをくり返して,この素早い動きは生まれる。この情報の流れは,人間の動きの制御にも通じるところがあり,これが生き物のような動きを生んでいる。
学生は研究の中心
島田さんは学生と研究を進める。研究を始めて間もない学生にも,どんどん国際学会で発表させる。「英語がしゃべれません」と弱音を吐く人もいるが,「当日を目指してしゃべれるようにしておけばよい」と,島田さんはおかまいなしだ。そうやって,みんなどんどん成長していく。あるとき学生が持ってきた質問に,島田さんにとっても未知の数式が含まれていて,すぐに答えられないことがわかった。こういうとき,島田さんは「1週間くれ」と言い,徹夜で勉強するという。一緒に研究していれば,学生が島田さんを追い越すこともある。研究の中心には先生も学生もいる。島田さんは,いろいろな動きをするロボットをつくっているが,実は,まだ何に役立つのかわからないロボットもある。しかし,いずれにしても自分が思い描いた通りにロボットが動くのがおもしろい。奥が深くきっと役に立つ。だから研究をし続ける。今日も想いの詰まったロボットが,研究室を動き回っている。(文・立花 智子)
島田 明(しまだ あきら)プロフィール博士(工学)
セイコーインスツル(株),千葉大学(客員教授),東京工科大学(非常勤講師),職業能力開発総合大学校(准教授)を経て,2009年より芝浦工業大学。専門はモーションコントロール。モットーは“理論と実践”。