研究者のキャリア戦略 上田 恵介

研究者のキャリア戦略 上田 恵介

立教大学理学部 上田 恵介教授

1950年、大阪府生まれ。理学博士。大阪府立大学農学部で昆虫学を学び、京都大学農学部昆虫学研究室を経て、大阪市立大学理学研究科博士課程修了。三重大学教育学部非常勤講師を経て、現職。

研究者になるためにスキルを伸ばし、実績を重ねていく日々の中で、本当に研究者になれるのか、自問する日もあるのではないだろうか。アカデミックキャリアを目指す研究者に必要なスキルや戦略を大学の研究者から学ぼう。今回は、立教大学の上田恵介教授に、研究者になりたい学生がとるべきキャリア戦略について聞いた。

広い人脈は研究者のキャリアを積むうえで欠かせない。その人脈が専門分野だけに偏るよりも、異分野の研究者へと広げることで人脈のバリエーションは増え、ポストを紹介してもらえる機会も増える。その人脈を構築するためには、伝える技術を上達させることが重要だ。異分野の人と交流することで研究者としてスキルアップを図れ。
ポイント どんな人も納得させる伝え方を身につける

[知識]研究分野の全体像を伝える

研究を伝えるうえで、その分野でどんな研究が行われてきたのか、自分の研究の位置づけを知らないと伝えることはできない。徹底的にその分野を知り尽くし、研究分野の全体像を理解することで、初めて自分の研究を人に説明できるようになる。

トレーニング▶和文の総説論文を書く
総説を書くにはその分野の研究背景や何が熱いトピックなのかを理解していることが必要だ。調べ尽くすことによって自分の研究分野を深く理解し、関連する研究分野の全体像の中での自分の研究の位置づけを話せるようになれ。

[思考]論理を明確にして話す

論理的思考は研究者の基本だが、コミュニケーションにおいてもそれは変わらない。論理が明確でない説明では、誰も納得させられない。論理的な思考を習慣化させることで、研究のストーリー、仮説、考察のすべてにおいて、抜け漏れのない話ができるようになる。

トレーニング▶論理展開が理にかなっているのか指摘してもらう
隣の研究室の研究者に仮説や考察を話して理にかなっているのかフィードバックを受けよう。自分の説明に何が不足しているのかを把握し、日々の積み重ねで議論に耐えうる論理展開を身につけろ。

[英語]科学英語を意識して使う

科学英語と日常で使う英語は違う。科学英語独特の言い回しや論理展開に慣れることで論文でも国際学会でも自信を持って世界中に発信することができるようになる。

トレーニング▶優れた論文のスタイルをまねる
科学英語を使いこなすには、ネイチャーやサイエンスに掲載されている論文を読んでそのスタイルやよく使われる言い回しをまねろ。日の実験ノートを英語でつけて覚えた言い回しを使うなど、英語で考え表現することに慣れろ。

[理解]相手の興味に合ったトピックスと絡めて話す

サイエンスに興味があっても専門分野の違う人に異分野研究の話をするときには、まず興味を持ってもらうことが重要になる。なぜなら興味を持ってもらえなければ、話を聞いてもらえないからだ。

トレーニング▶聞き手の興味を引き出す
聞き手の興味を理解し、研究に興味を持って貰う糸口を探せ。例えば、事前に話すことが固まっている口頭発表よりも、ポスター発表で多くの参加者とデイスカッションする。研究の導入の説明パターンをいくつか用意し、それぞれの研究分野の人が興味を持ちそうな話題提供を心がけることが重要だ。