力を合わせて 、無限大の夢を目指せ!|内木場 文男

力を合わせて 、無限大の夢を目指せ!|内木場 文男

日本大学 理工学部 精密機械工学科 教授

人間が小さくなって,からだの中を治療することは不可能でも,ロボットなら可能だ。内木場文男さんは,アリなどの昆虫の動きに注目して,わずか全長4mmしかない大きさのマイクロロボットを実現した。

多くの技術が詰まった,小さな昆虫

顕微鏡でのぞきながら,電気を通すと,小さな肢を必死に動かして進む。その姿は,まさに昆虫のよう。からだをつくるパーツは,樹脂や金属をかたち通りに切り抜くのではなく,MEMSという技術を利用する。シリコンの上にレジストという液体でかたち通りに膜をつくり,必要なところ以外を写真の現像に使う液体などで溶かしてつくられる。肢にはニッケルとチタンの合金からなる人工筋肉ワイヤを使用。50℃を境に温度を上げると縮み,下げると元に戻る性質を利用し,6本の肢のうち,3本が常に地面につくように設計されている。さまざまな技術が組み合わさり,マイクロロボットはつくられている。

血管のなかから宇宙まで

「最終的には,全長1mm以下を目指しています」と内木場さんは意気込む。からだの中で自由自在に動かすために,エネルギーとなる糖分を見つけ出す人工頭脳を搭載したものも開発中だ。「昆虫に限らず,水中を泳ぐ生き物にも注目しています。将来は,血管の中での治療や,宇宙での作業などいろいろな場面で活躍することが期待されるでしょう」。

ロボットづくりはチームプレー

昆虫型マイクロロボットの開発チームでは,学生がそれぞれ得意分野を活かし,水中動物の調査,人工筋肉の動き方,シミュレーションなどの役割を分担して,協力しながら進める。研究室内に仕切りはなく,内木場さんも学生も同じ空間で会話をするため,アイデアが生まれやすい。和気あいあいとしたチームは,小さなロボットで大きな未来を切り開いていく。(文・安冨真央)

内木場 文男(うちこば ふみお)プロフィール:

日本大学 理工学部 精密機械工学科 教授。1983年,早稲田大学理工学部応用物理学科卒業。1985年,電気通信大学大学院博士前期課程修了。TDK株式会社,MIT客員研究員を経て2003年より日本大学理工学部精密機械工学科勤務。2007年 教授。博士(工学)。

http://www.eme.cst.nihon-u.ac.jp/~uchikoba/