進化のスピードが早い個体とは何か?金子 邦彦先生<後編>

東京大学
総合文化研究科 広域科学専攻
総合自然科学科 教授
複雑系生命システム研究センター長
金子 邦彦

金子先生は物理屋さんである。前編はこちら。

生きているという状態は物理屋さんから見ると変な状態なんですよ:金子 邦彦先生<前編> | someone

曰く、進化のスピードが早い個体はゆらぎが大きい

金子先生の研究によると、進化のスピードが早い個体というのは、ゆらぎの大きな個体だということなのだとか。ゆらぎが大きな個体とは何かというと、DNAが同じ個体であるにも関わらず、その組成成分に大きな変化が出ている個体のこと。これは生命だからと言ってしまうとなんとなく納得してしまうのだが、遺伝子が同じなのにも関わらず、組織を構築しているタンパク質のバランスが違ったりするのだという。

それを、遺伝子が変わらないのに、ゆらぎの大きな個体と言うとすれば、その個体の遺伝子に変化があった時に進化スピードが早いのはゆらぎが大きな個体なのだそうな。

ゆらぎの量を見てみると、桁が違うくらい変化を持つ固体もあるとか。

ちょうど、このおはなしを聞いた直後に、面白法人カヤックの柳澤大輔さんに取材をした際に「変化を大事にする人は強い」という話をしていて、ついついこの話を披露してしまいました。遺伝子レベルの話と意識レベルの話がリンクした瞬間でしたね。

物理学を習得すればするほど、生命のふしぎに近づいていける

金子先生の話を聞いてみて感じたのはこれ。
色々な理論が頭に入っていることで、応用が効く。
新しいモデルを作るには、多くの知識が必要になるし、それらが見渡せる位置にいるから、生命という世界が更に面白い世界に見えているのだろう。

「物理屋さんじゃないとこういう発想にはならない」

金子先生の話に、ちょこちょこ出てきた言葉だけれど、この自分の特徴を把握し、それを強みにして研究を推し進めていくというスタイルは話を聞いていてとても分かりやすいし、面白い結果につながるのだろうと思っています。

物理やってるんだから、物理の事しか考えちゃいけないわけではない。物理をやっているからこそ出来る研究というものがあるんだ。そういう視点もあるということを頭の隅にでもおいておいて下さい。