創造性を生み出す脳のはたらき 酒井邦嘉
人はちょっと特別?
人ってとても創造的だと思いませんか。すごく特徴的なのが替え歌です。
歌詞を入れ替えたりして、自由に言葉を扱うことができます。
鳥は意味があるさえずりをしていると言われますが、
親から子へ同じ鳴き方が伝わるだけで、勝手にアレンジするのは見つかっていません。
いつも同じさえずり方です。
言葉を自分勝手に扱える、というのは人が他の動物に比べて特別優れた創造性を持っている能力だと思います。
私はそのカギが脳にあると思っていて、言語を通じて人の脳と、動物の脳の違いを調べたいと思っています。
テストで測る脳のはたらき
言葉を扱うときに脳のどんな部位が働いているか計測するため、
英語のテストが得意かどうかは関係ない新しいテストをつくりました。
10代の人から50代の人までいろんな人に受験してもらって、
テストを解く間の脳の働きを測定しました。
すると言葉を操るときに必要な脳の領域があることがわかりました。
それは文法、読解、音韻、単語を司る4つの領域があります。
左右の脳両方にありますが、中心的に働くのは左脳のほうでした。
文法領域がクリエイティビティを生む
この文法領域というのが、ほかの実験でも面白い挙動をしていました。
例えば将棋の実験。将棋には定石といって、「こう来たらこう返す」といった定番の指し手があります。
なかでも将棋の強い人は、定石を離れた、誰も指したことがない創造的な一手を指すことがあります。
こういった一手を考えるときに、働くのは文法領域なのです。
文法領域とは、定石をあえて指さない、または替え歌を歌うなど、
過去の動作に執着しないで新しい方法を取ることに関わる中枢ではないかと睨んでいます。
過去に囚われない、とはすなわち、クリエイティブだということだと思います。
ハマることで、高校生の脳はもっと創造的になれる
さて、高校生の脳は発達の途中です。出会ったものに対応してつくり込むことができるのです。
あなたは今ハマっているものがありますか?
きっと脳はその”ハマっているもの”の才能を拡大するためにどんどん変化していくでしょう。
例えばサッカーを1日5,6時間もやれば脳が変化して、パスセンスやポジション取りが向上するでしょう。
ですから、何かにハマっている人はそれをとことんやってみる。
まだハマっているものがないという人は、いろいろやってみることです。
逆にハマっているものがない、という人はいろいろなものをひいきせず、
公平に物事を捉える人なのかもしれません。
いずれにせよ、いろんなことにチャレンジして脳をつくっていってください
酒井教授からの高校生へのメッセージ
酒井邦嘉 Kuniyoshi Sakai
東京大学総合文化研究科 教授
研究室HP
Written by Yusuke Shnozawa