さかなを知るための、自分だけの視点 さかなクン
サンゴ礁で頭を下にして泳ぐヘコアユ、胸びれをつばさのように広げて海面を滑空するトビウオなど、魚は世界に 30000 種以上いる。
私たちとおなじ脊椎動物である彼らは、水の世界で、なにを考え、生きているのだろう。
魚の正面顔、見たことある?
普段、友達とは向き合って話すことが多くても、魚と向き合うことは あまりない。
東京海洋大学客員准教授のさかなクンが、最初に興味を持った生き物 はタコだった。
友達がノートに描いた落書きからタコの存在を知り、図 書館にこもって図鑑を読みあさったり水族館や魚市場に出かけたりした。 そして、いつしか魚も好きになっていった。
そんなとき,たくさんの種 類の魚が描かれた下敷きに、顔の長い魚を見つけた。
「なんだこれ!!」 とさかなクンが驚いたその魚は、ウマヅラハギだった。
そのかたちに感動したさかなクンは、ウマヅラハギに会いたくてたまらなくなった。
その日の夜、家に帰ると北海道から荷物が届いていた。開けてみると、なんと!ウマヅラハギが 3 匹並んでいるではないか。
しかも、その正面顔が すごく可愛かったのである。
「この角度がなんともいえないんですよ。動 物なのでそれぞれ個性があるし、どのお魚の表情もほんとに好きなんです」。
もともと絵を描くのが好きだったさかなクンだったが、これをきっかけに魚の正面顔も描くようになったという。
生き方に魅力あり
子どものころから魚に夢中 だったさかなクンは、現在約 80 匹の魚たちを飼っている。
毎日「今日は機嫌良い んだね」などと一匹一匹に声をかける。
言葉は通じなくても、エラを動かす回数や表情など、じっくり観察する といろいろなことに気づくようになるのだ。
そんなさかなクンが最近気になる魚が、マトウダイ。
砂底に棲み、 千葉県館山付近では水深 20m ~ 30m の定置網にかかる。
細い円盤状のからだには大きな黒い丸状の模様がある。
興味深いのは、マトウダイは獲物を狙うときからだを横にして徐々に近づく。
縦よりも横のほうが、円盤状のか らだが獲物の視界に入りにくくなるためだといわれている。
獲物を捉えるときに、ピューっと馬のような口を飛 び出させるのも特徴で、じっくりとその成長過程や生態を見てみたいという。
「さかなを研究する魅力は、魚特 有の姿やかたちにあります。かたち、色や模様、あとはやはり生き方ですね。そんな魚を研究すると、ほんとに いろんなことが分かる。生態だけでなく、魚からこんなことが出来る、作れるなどいろいろな発見や感動があり ます。無限の魅力が広がっているんです」と、語る。
独自の視点で研究しよう
「絶対この研究、こうでなくてはいけないというものはありません。これから魚の 研究をしようと考えているみなさんには、独自の見方、独自の研究をしてほしいですね。そうするといままで見えていなかったものがどんど ん見えてくると思います」。
魚の種類だけその不思議さと魅力は尽きない。
今年の夏、水族館や海に出かけるとき、 そんな彼らと向き合ってみよう。
さかなクン
- 東京海洋大学 客員准教授
- 農林水産省 お魚大使
- お魚らいふ・コーディネーター
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