あなたのまちに、大規模竜巻がやって来る? スーパーセル

2012年5月6日、ここは筑波大学に通うsomeone記者の部屋。見ていたテレビが停電で消え、あたりは沈黙。突然のことに空を見上げると、真っ黒な巨大な雲から雷が落ち、大粒の雹が降っています。つくば市内では、巨大積乱雲によって生み出された強力な竜巻が街を襲っていたのです。 

家を全壊させる大規模竜巻の力

あまり話題になることがない竜巻ですが、日本でも年平均で約17個発生しており、じつはそれほどめずらしいものではありません。
大きな被害をもたらすような竜巻が少ないので、あまりニュースにならないのです。
しかし、今回の竜巻は日本で観測されたなかでは最大クラス。
毎秒70m以上と推定される猛烈に強い風で、幅500m、長さ17kmもの範囲で被害を出しました。
今回、これだけ大規模な竜巻を生み出したのは、日本ではめったに見られない巨大積乱雲「スーパーセル」であることがわかっています。

発達を続ける積乱雲、スーパーセル

スーパーセルの模式図

スーパーセルの模式図

地上の湿った空気が日光で温められると、軽くなって上昇します。
すると、気圧の低下によって冷やされて、空気に含まれ切れなくなった水蒸気の一部が水滴になり、雲をつくります。
水蒸気が水滴になるときに放出される熱が周りの空気を温め、さらに上昇して水滴をつくることをくり返して雲は成長していきます。
水滴の一部が集まると、やがて重い雪や雹となり落下していきます。
そのとき生まれる下降気流が、雲をつくる上昇気流を打ち消してしまうので、積乱雲は通常1時間ほどで消えてしまいます。
しかし、地上と上空で風向きや速さが異なると、上昇気流と下降気流の位置がずれます。
すると、上昇気流が打ち消されずに積乱雲は発達を続け、スーパーセルとなるのです。
その内部にはメソサイクロンと呼ばれる直径数kmの空気の回転渦ができます。これが巨大竜巻発生の引き金となるのです。

都市の熱気が竜巻を呼ぶ!?

こうした大規模竜巻が大都市を襲い、甚大な被 害をもたらす可能性もあります。
近年話題になることが多い都市型集中豪雨が発生する原因は、大都市の地表温度を上昇させるヒートアイランド現象によって積乱雲が発達するからではないかと考えられています。
積乱雲が発達すれば、竜巻発生のリスクが高まります。
突然空に立ち込めた真っ暗な巨大な雲と、落雷、そして大粒の雹が見えたとき、あなたのまちにはすでに竜巻が発生しているかもしれません。