紅葉はなんで起こるのでしょう
カエデのように紅葉する樹木が、秋になってまず考えることは、栄養源の「リサイクル」です。
いったん根ざした場所から動けない植物にとって、土から吸収できる窒素栄養分は限られています。
そのため、どうしたら無駄なく使えるか、植物はいつも悩んでいます。
落葉樹の場合、葉緑素やタンパク質をはじめ窒素を含む成分は分解され、冬が来て葉を落とさなければならなくなる前に、幹へと回収されます。
ただし、光合成も化学反応のひとつであるため、秋になって涼しくなると能率が下がります。
このような中で、タンパク質を含め光合成に必要な成分を分解していけば、葉にあたる光を処理し切れなくなります。
私たちが日焼けで痛い思いをするのと同じく、強すぎる光は組織を傷め、窒素分の運送どころではなくなるのです。
ここで登場する 救世主が、秋を彩る赤色の正体「アントシアニン」です。
この色素には、強すぎる光で葉が傷まないように抑える作用があると考えられています。
季節の変わり目がはっきりしている地域で、使い切れなくなった光から葉を守り秋の冷え込みに適応して進化した姿が、あの紅葉なのでしょう。(
吉田 亮祐 )
取材協力:東京大学大学院 理学系研究科 日光植物園 准教授 舘野 正樹さん