水から出る微弱な電波信号をキャッチして洪水被害を減らせ 沖 大幹

水から出る微弱な電波信号をキャッチして洪水被害を減らせ 沖 大幹

今夏,アメリカでは記録的な干ばつに見まわれ,穀類を中心とした農作物が大打撃を受けています。
昨年7月に起こったタイでの大洪水も記憶に新しいかもしれません。
このような災害は50年に一度,100年に一度などと言われますが,一度起こるとその影響は計り知れません。
東京大学生産技術研究所の沖 大幹先生は世界中の水の循環を調べ,人々の生活へ与える影響を調べています。

 雨はいつどこで降るのか,世界共通の法則性を探す

東京大学 沖大幹教授水の循環の主役となるのはやはり雨です。
降り過ぎても,降らなくても災害につながります。
沖先生は世界のどこでどの程度の雨が降っているのか,豪雨が降った場合にはいったいどのくらい珍しい大雨で、どのくらいの水害になりそうなのか、少雨傾向が続いた場合には食料生産の減少などどのくらいの悪影響となりそうなのか。
それらを予測するため,地球の水循環と世界の水資源に共通する普遍的な法則を探究しています。
その研究のカギを握るのは宇宙を回る人工衛星です。
人工衛星が世界中から収集した大気中の水蒸気や雨量の情報を解析します。
一方で,人間がどこにどのくらいいて,どの程度水を使っているのかといった社会情報を収集し、洪水や渇水でどのくらいの被害が生じそうなのかと推計します。
計算された結果と実際の被害を比較し,両者が一致していたかどうかを検討します。
推計値の算出法に改良を重ね,事前の災害警戒情報や事前の被害想定を把握することを目指しています。

 宇宙から世界の水の動きを把握する

ところで,人工衛星でどうやって雨量を調べるのでしょうか。
意外と思えるかもしれませんが,じつは雨(水)からはマイクロ波という電波が出ています。
マイクロ波とは電子レンジで使われているので,聞き覚えのあるひともいるかと思います。
人工衛星はこのマイクロ波を受け取り,雨量を調べているのです。
それだけでなく,地面が湿っているか,乾いているのかも知ることができ,雨や干ばつがどのくらい持続しそうなのか、あるいは同じ量の雨が降った場合でも洪水となって川に流れ出てくる量がどの程度違うのかを知ることもできます。
「これらのデータを解析すると,地上の水循環のすべてが手の上でわかったような気になります。それが楽しいのです。」

沖先生の水への情熱は冷める気配がありません。

東京大学生産技術研究所教授

沖 大幹

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