歯と健康を、もぐもぐ守る! 株式会社ロッテ
噛むこと(咀嚼)は、食物を消化するための最初の行動ですが、最近では、その行動自体に脳や免疫の活性化などの健康効果があることがわかってきました。
ロッテ中央研究所でガムの開発をする徳本匠さんは、そんな咀嚼の大切さに注目する研究者のひとりです。
つくるか、壊されるか。口の中での闘い
食事の後はガムを噛む。そんな習慣が広まる約20年前までは、「ガム=虫歯の原因」というイメージが一般的でした。
虫歯菌は、食べ物に含まれる糖分から酸をつくり出し、歯の主成分であるハイドロキシアパタイトを分解します。
ガムは、口の中に長く滞在することから、虫歯菌にエサを与える食べ物として認識されていたのです。
そこで注目されたのが「キシリトール」でした。
これは、糖のように甘いけれど虫歯菌には分解されない、つまり虫歯の原因にならない成分なのです。
徳本さんたちは、だ液の分泌を促進するというガム本来の役割に加え、虫歯菌にエサを与えないという特徴を組み合わせて、歯の成分を合成する「再石灰化」を促すガムをつくり上げました。
キシリトール入りガムは、それまでの常識を覆し、ガムは歯によいというイメージを社会に定着させたのです。
海藻成分が援護射撃!?
その後も改良を重ねる中で徳本さんが注目したのは、味噌汁の具としても使われる海藻フノリの成分「フノラン」でした。
歯のサンプルを分割したものに酸を加え、人工的に虫歯の状態をつくります。
そこに、キシリトールとフノランを加えると、キシリトールのみを加えたときよりも歯の石灰化率が上昇することがわかりました。
フノランが歯の成分となるカルシウムイオン(Ca2+)と反応し、再石灰化を促進していたのです。
フノランと、歯の原料となるリン酸一水素カルシウムを配合し、その再石灰化促進効果が認められ、特定保健用食品に認定されたキシリトール入りガムもあります。
ガムは、からだ全体の健康に貢献できる
噛むことには、だ液の分泌促進による歯の再石灰化の他にも、口臭予防、免疫の活性化、そして、脳の活性化による認知症予防にも効果があることがわかってきています。
そこで、ガムを敬遠しがちな高齢者向けに、入れ歯につきにくいガムを開発するなど、徳本さんは「咀嚼の習慣をさらに広めていきたい」と考えています。私たちの健康を守るために今日も、試作品をもぐもぐしながら研究を続けます。(文・立花智子)
取材協力
株式会社ロッテ 徳本 匠