治せないケガもiPS細胞で治せる?
医療の世界の研究開発は日々進んでおりいろいろな薬や手術法が開発され、以前は治療できなかった病気やケガを治せるようになっています。7月6日にアメリカ科学アカデミー紀要(電子版)に発表された論文によると、これまで治療が困難とされていた「脊髄損傷」が、iPS細胞を使うことで、マウスで治療できたという、画期的な発表がされました。
iPS細胞とは、2006年に日本の研究者 山中伸弥教授によって作りだされた細胞で、ノーベル賞級の成果だといわれています。体細胞にたった4つ(現在は3つでOK)の遺伝子を導入することで、体細胞が万能細胞(=iPS細胞)に変化するという、画期的な技術です。万能細胞は培養の仕方を工夫することで神経細胞、心臓の筋肉の細胞、血を作る細胞など、あらゆる細胞に変化することが可能であると考えられています。ただ、iPS細胞はその分裂する能力の高さから、分裂が進みすぎて腫瘍(しゅよう)になってしまう危険性が問題の1つとされていました。
そのため、山中教授と岡野教授たちは、あらかじめ用意したiPS細胞をマウスの脳に移植し、半年たっても腫瘍を作らなかったiPS細胞を選びました。次に、それをさまざまな神経細胞のもととなる神経幹細胞に変化させ、脊髄が損傷したマウスの損傷9日目に50万個移植すると、移植前は動かなかったうしろ脚を使って歩くなどできるまでに回復したといいます。岡野教授は「安全性を厳密に評価すれば、iPS細胞を将来、脊髄損傷の治療に使える道が開かれた」と話しています。
日本発の技術が、世界の医療を変えていっています。私たちも見守っていきましょう。