喫煙者の肺で 10倍以上の突然変異を発見
マンガに出てくる不良アイテムの代名詞、タバコ。
大人の世界に一歩早く踏み出したい気持ちから、「吸ってみたい」なんて考えてしまう人もいるかもしれません。
でも、ちょっと待った!
2012年9月14日、生物学分野で世界最高峰の科学雑誌『Cell』に、タバコと肺がんとの関係について新たな研究成果が発表されました。
タバコを吸うと体にどのような害があるのでしょうか。
ワシントン大学のRamaswamyらが研究対象としたのは、17人の肺がん患者です。
患者の中には、タバコを全く吸ったことがない、または少しだけ吸っていたものの肺がんにかかる38年前には止めている患者(非喫煙者:6人)と、喫煙者11人がいました。
彼らから肺がん細胞を取り出し、DNA全体(ゲノム)の塩基配列全て解読して2つのグループ間でのタバコの影響を調べたのです。
その結果、非喫煙者のゲノムに生じた突然変異は842個~1268個だったのに対して、喫煙者では7424個~26202個。
特にタンパク質の設計図となっている部分(遺伝子)では、非喫煙者は10~22個、喫煙者は104~1362個の変異が見つかりました。
喫煙者は、非喫煙者と比べて10倍以上もの変異を持っていたのです。
さらに喫煙者グループの中には、傷ついたDNAを直すための遺伝子に変異が起きてしまったために、他の喫煙者と比べても数倍の変異を持つ患者もいました。
遺伝子に変異が起こると重要なタンパク質が作られなくなったり、異常なタンパク質ができることでがんなどの病気にかかりやすくなると考えられます。
この研究では、喫煙者と非喫煙者の間で突然変異の起こり方や、変異が起きた遺伝子が違うなど、肺がんが生まれるメカニズムとタバコの関係を解きほぐしていくための新しいデータを得られました。
一度かかってしまうと治りにくいと言われる肺がんの新たな治療法の開発に、期待がかかります。