骨の土台をつくる、メッシュとスポンジ
放課後は、骨折で入院している友だちのお見舞いへ。大きなけがだったのですが、どうやら手術後は順調に回復しているようです。未来の病院では、けがの回復を促進する技術がたくさん用意されており、骨折の治りも早いのです。
骨は骨に置き換わる
折れた骨は、3つの段階を少しずつ重なりながら経て、治っていきます。第1段階は、折れた骨のかけらや壊れた組織が免疫細胞により除去される「炎症期」。第2段階は、骨折から数日で始まる「修復期」。骨の外側にある骨膜の再生と軟骨の形成が始まり、修復された新しい骨「仮骨」が形成されます。第3段階の「リモデリング期」では、仮骨が通常の強い骨に置き換わっていきます。もと通りに回復するまで数か月間、長いときには数年間もかかるのです。
骨の再生を助ける新素材
骨は再生能力が高い組織ですが、新しい細胞が増殖するための土台である「足場」があると、再生・修復が促進されます。用いられるのは、コラーゲンや、乳酸とグリコール酸が結合したPLGAという物質をメッシュ状に加工したもの。しかし、コラーゲンスポンジは、細胞とくっつきやすいのですが強度が弱く、PLGAの場合は、頑丈ですが細胞とくっつきにくいので、どちらも足場としては弱点がありました。そこで考えられたのが、コラーゲンとPLGAを組み合わせる方法。メッシュ状のPLGAの隙間にコラーゲンが入ることで、細胞がくっつきやすく頑丈な足場が実現しました。
材料は、からだの中にある
未来の病院では、さらにひと工夫。骨の修復を早める「骨形成因子4(BMP4)」というタンパク質を、足場に加えます。すると、骨形成を促進する骨芽細胞が増え、カルシウム沈着を促すため、骨折の治りがさらに早くなるのです。コラーゲンもBMP4も、元はからだの中でつくられるもの。それらをうまく利用することで、からだが本来持っている治す力に弾みをつけることができるのです。こうした研究が、治療法をどんどん進化させていくのでしょう。