ロボットで痛みを緩和!? 小関義彦

ロボットで痛みを緩和!? 小関義彦

ロボットで人の役に立つ研究がしたい。

人一倍その思いが強い小関研究員は、医療の世界に足を踏み入れた。
そして、ロボット工学のスペシャリストとして数々の医療機器を開発してきた。
そんな小関研究員が現在研究しているのは針刺し補助ロボットだ。

DSC_0143手術や出産に痛みはつきものだ。
この痛みを安全に和らげてくれるのが麻酔であり、麻酔科医である。
特に硬膜外麻酔は長時間痛みを抑えることができるので、長い分娩中の痛を長い時間、絶え間なく和らげてくれる頼もしい麻酔である。
硬膜の手前で針を正確に止めるのは麻酔科医の研ぎ澄まされた感覚と経験のたまものである。
しかし、今日では麻酔科の医師不足は深刻だ。
ロボット工学で硬膜外麻酔を簡単に出来ないか、麻酔科医の負担を減らせないか、手術や出産の痛みを減らせないかと考えた。
そうして、針の手応えを判り易くするロボットというアイデアを思い付いた。

kozeki2麻酔のために針を身体の奥まで挿入していく時、今どの辺まで刺さっているかを指先の感覚で知ることは非常に難しい。
というのも、針の側面が常に「肉」に接しているために摩擦が発生している。
そのため針先が硬いものに触れているのか、柔らかいものに触れているのかが分かりづらくなってしまっているからである。
小関研究員は2重針でこの問題を解決する。
針を2重にして針の側面を別にすることによって、側面の摩擦の抵抗力と針先の抵抗力を切り離して麻酔科医に提示することが出来る。
これによって麻酔科医は針先が何に触れているのかを非常にクリアに感じることが出来、より安全に麻酔を行うことが出来る。

2重針を医療機器として世に出すためにしなければならないことはたくさんある。
技術を完成させることはもちろんだが、その技術が本当に安全に使用出来るか、麻酔科医の先生方が実際に使用しやすい形になっているか、手頃な価格で提供できるか、等々幅広い視野を持って取り組まなければならない。
しかしながら、このアイデアが実際に医療現場で使用される様になった時、麻酔科医はロボットの助けを手に入れ、より安全に麻酔をかけることが出来ているはずだ。

しっかりとしたバックグラウンドを持って全体をオーガナイズすることに非常にやりがいを感じていると小関研究員は力強く答えてくれた。(鈴木孝洋)

小関義彦 研究グループ長 産業技術総合研究所 ヒューマンライフテクノロジー研究部門 治療支援技術グループ