肥満から起こる様々な自己免疫病の"決定的な原因"を発見! 宮崎 徹

肥満から起こる様々な自己免疫病の"決定的な原因"を発見! 宮崎 徹

糖尿病、動脈硬化、自己免疫疾患など、肥満に伴う幅広い疾患の統一的な治療のターゲットを発見したとの発表がされました。

現代社会において、糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病が肥満に伴い発症するが、同様に、肥満は種々の自己免疫疾患の引き金になることも知られている。しかし、なぜ肥満が多彩な自己免疫疾患を導くのか、そのメカニズムは明らかでなかった。

現代人の悩みの1つに肥満というものがあります。著者自身、年に何度かダイエットを試みてはいつの間にか忘れているという事を繰り返している訳ですが、これは避けがたい事実な訳です。

ダイエットという緩い制限であれば、構わないと思うのですが、肥満から派生する疾患がQOLに大きく影響を及ぼします。今回東京大学で発見されたのは、肥満に伴う自己免疫疾患の原因となるものであり、これがわかることによって、これらの疾患を防ぐことが出来るとかんがえられると言います。

原因の中心となるのは、脂肪を融解する血液中のタンパク質AIM (Apoptosis Inhibitor of Macrophage)。これを制御する事により肥満に伴う自己免疫疾患も抑制し得ることが明らかになっています。

肥満が進行すると、血液中で増える脂肪酸によって免疫細胞が活性化され、免疫グロブリ ンの一つである IgM(注)が血液中で増加する。IgM が過剰に増えると、それが脾臓で自 己抗体を作る悪玉の免疫細胞を生み出す働きをしてしまう。興味深いことに AIM は血液中で この IgM に結合しており、脾臓で IgM が長期間働けるように強力に支援していることが明ら かになった。したがって、肥満が進行し血液中の IgM が増加しても、AIM の量が低いと、脾 臓で IgM がうまく働けず、悪玉の免疫細胞も増えない。発表者らは AIM を作れなくしたマウ スを使って、これを証明した。

すなわち、糖尿病や動脈硬化と同じく、過度に肥満しても血液中の AIM の量を抑えておけ ば、自己免疫疾患もまた抑制できる可能性が高い。したがって、AIM は、糖尿病、動脈硬化、 自己免疫疾患など、肥満に伴う幅広い疾患の統一的な治療のターゲットになると考えられる。

IgMとは:IgG や IgE などと同じく抗体の一種であるが、もっとも幼若な抗体である。IgM は抗原に 対する特異性が低く、細菌など外来抗原に加えて自己抗原にも結合できるため、血液中の IgM が過度に増加すると、脾臓で自己抗体の産生細胞を活性化させてしまい、自己免疫疾患 の原因となる。

かなり根本的な部分の発見に見えますね。これによって救われる人がかなり大きいと考えられます。

プレスリリース:PDF

発表者

東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 分子病態医科学部門 教授 宮崎 徹

東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 分子病態医科学部門講師 新井 郷子