面白い!に打ち込んでキャリアを拓く 坂本 一憲

面白い!に打ち込んでキャリアを拓く 坂本 一憲

坂本 一憲 さん
国立情報学研究所 特任助教

「未踏」は、「天才的IT 人材を見つけ出す」と銘打ち情報処理推進機構が実施するプロジェクトだ。今回話を聞いた坂本一憲さんは大学院在学中に「未踏ユース」に採択された。彼の原動力は、面白さを追い求めるマインドが形成している。

学術論文が研究者へのきっかけ

プログラミング好きだった坂本さんは、中学生のときにゲーム作りにのめり込んだ。その過程でどうにも使い勝手が悪いソフトに出会った。「当時はプログラムを改良するにも、ソフトの中身がどうやって動いているかを説明するような一般向けの本が多くは見つからなかったんです」と坂本さんは当時を振り返る。より良い情報を求める過程で、学術論文に辿り着いた。そこには市販の本には書かれていない最先端の研究が書かれていた。「こんな世界があったんだ」。自分自身も新しい技術を創る研究者になりたいと思った。

興味は多様に、想いはシンプルに

大学進学後、坂本さんの興味はさらに広がっていった。ソフト開発に加えて、ソフト開発の過程や環境についても興味を持った。きっかけは大学の授業で出された、これまでひとりで作ってきたソフトをチームで作るという課題だ。やってみると開発者同士のコミュニケーションや製作上のインフラなど、1 人のときとは違う難しさに気がついた。その経験を経て、「開発者にとってよりよいソフトとは何か?」という、より大きな問いに向かうことになった。開発行程の一部の自動化や、多様な言語を使えるプラットフォームの開発など。開発環境を改善するためのあらゆる方法を考え、実装した。研究者として追い求めるべき対象は一気に多様化したが、中学生の頃のように新しい世界に挑戦する毎日が待っていた。「振り返ると、自分が面白いと思ったことをひたすらやっていただけなんです」。

面白い!を集めたからこそ

広がった可能性大学院進学後、活動はより多様になる。学生向けのプログラミングコンテストも開催した。一見バラバラに見える活動は、キャリアの中でつながっていく。「未踏ユース」の採択には、大学の授業で行ったチームでの開発経験が活きた。リバネス研究費ベネッセ賞に採択されたゲームコンテストの研究は、前述のプログラミングコンテストの経験に裏打ちされている。「面白い」と思った活動、研究に打ち込んだからこそ、キャリアを切り拓くことができたのだ。今年の4月から、坂本さんは国立情報学研究所の特任助教のポジションに就いた。新しい研究環境の中、今日も「面白い」何かを追い求めて研究を続ける。
(文・武田 隆太)