治らぬ病気を追いかけろ 白血病細胞の正体
とうとう薬が病気の場所までたどり着いたよ。
でも、その前に病気ってどういう仕組みで起こっているかを知らなきゃね。
病気の犯人を見つけて退治することが、くすりが「効く」ってことだからさ。
いつもと違う、からだの中
体調が悪いとき、「調子悪いなぁ、何が原因?」と考えたことはありませんか??
例えば、緊張したときに起こる頭痛。
ずーんと頭が重い感じがするのは、硬直した脳周辺の筋肉が神経を刺激してしまうから。
また、貧血は、赤血球に含まれる鉄が不足して、酸素を体中に運べなくなることが原因。
このように、すべての病気で症状が起こるとき、神経や、筋肉、血液、などからだのどこかがいつもと違った動きをしています。
このからだのどこかで現れる異常事態の犯人を見つけることも、くすり研究の一つです。
にせの指令を食い止めろ
病気の中には、からだの設計図といわれるDNAの変化が原因で起こる病気もあります。
その1つが白血病です。
白血病は、血液の中に存在する白血球のがんで、正常な細胞にとっての栄養や住みかを奪い、時には、他の細胞にとっての毒になるような物質を出しながら、様々な組織を侵していきます。
つまり、白血病細胞は、周りの細胞がどうであろうとおかまいなく増えるのです。
では、どうやって増え続けるのでしょうか。
普通の細胞は、周囲から「増えろ!」という指令を細胞の表面で受け取ります。
それが核に伝わり、細胞を増やす最終命令を下すタンパク質が合成されて初めて増えることができます。
しかし、ある種の白血病細胞では、DNAの変化によって、細胞表面で「増えろ」という指令を受け取っていないにも関わらず、にせの指令が核に伝わるように変化しています。
結果、ほんものの指令がなくても細胞は勝手に増えるようになってしまうのです。
この白血病細胞の増殖を抑えるためには、このにせの指令を食い止めることが必要です。
この指令を食い止める化合物が、くすりになります。 このように、病気のしくみを突き止めることは、くすりづくりの出発点になるのです。
今は治らない病気も、その仕組みが解明されれば、くすりをつくれるかもしれません。
いつもくすりの研究は、病気を追いかけています。 (文・圡井恵子)