分身ロボットが孤独を癒す 株式会社オリィ研究所 吉藤 健太朗
遠く離れた人に会いたい-そんな想いを抱きながら、孤独を抱える人は数多くいる。高性能な各種センサ、音声・画像認識などを搭載したハイスペックな家庭用のロボットが数多く開発される中、シンプルな機能ながら要介護者や病院から多くの共感を集めるロボットが早稲田大学発のベンチャー企業「オリィ研究所」のOriHime(オリヒメ)だ。
OriHimeにはWebカメラとスピーカー、集音マイクがついていて、見たもの、聞いた音をPCやタブレット端末を通じて体験し、スピーカーを通じて自分の声を相手に届けることができる。
そして首をリモートコントロールで動かすことで、自分が見たい映像を見ることができる。
機構としては極めてシンプルだが、使用者の反応は極めてよい。
「コミュニケーションロボットは、状況に応じて笑顔になったり、怒ったりと言葉以外の表情も重要だと考えられがちですが、OriHimeは無表情。顔の表情はなくても、能面を参考にデザインされた顔と音声と体の動きから、周りに居る人は表情を”感じる”事ができるのです」。
実際に病院で無菌室から出られない女の子が家族と時間を共有できるようにとOriHimeを使って実験したところ、ロボットがあることで家族は彼女に向かって話しかけるように会話ができ、彼女自身もまるで自分がその空間にいるような感覚を持つことができたのだという。
プラットフォームとしてのロボット
吉藤さんが目指すのは、ロボットの普及ではなく、その先にある「会いたい人に会えて、行きたいところに行ける社会」を構築すること。
そのため、OriHimeを構成するソフトウェア、ハードウェア、インターフェイスの3つ技術を、それぞれオープンプラットフォームとして開放し、パートナーを増やしていくモデルを描いている。
孤独を抱える人々からの生の声を聞き、多くの人々と共同で問題を解決することが目指すべき世界への一番の近道だと考えているからだ。
実際の病院や患者と連携し、臨床研究を進めることができるこのオリヒメプラットフォームを活用してくれる共同研究先を、彼らは今、求めている。
株式会社オリィ研究所
[所在地] 東京都墨田区八広4-39-7
[URL] http://orylab.com/