地球も僕らのおサイフも、守ってくれるCVT
自動車を普段使うときに気になるのは、やっぱり「燃費」。1Lの燃料で何km走ることができるのか、エンジンの燃料消費率を表します。燃費のよいエンジンの開発も進められていますが、現状のエンジンを「効率よく使う」ことも大事。そのために、「変速機」の改良が進められています。
矛盾する回転数を解決せよ!
エンジンは、燃料を燃やすことで得られるエネルギーを、回転運動に変えています。
1分間に数千〜10、000回という猛烈な回転の力がタイヤに伝わり、自動車は走っています。
しかし、一般的な乗用車のタイヤは円周が約2mなので、時速10kmのときタイヤは1分間に約90回転、時速80km出しても、約700回転しかしません。
エンジンに負担をかけず、そのとき必要なスピードに応じたタイヤの回転数を生み出すために、2つの回転数の矛盾を解消するのが「変速機」です。
エンジンのよき相棒、変速機
一般的な変速機は歯車の組み合わせでできています。
エンジン側の歯車が小さく、タイヤ側の歯車が大きければ、エンジン側の歯車が1回転してもタイヤは少ししか回らないため、エンジンの回転数を大きく保ったままスピードを遅くすることができます。
逆に、エンジン側の歯車を大きく、タイヤ側を小さくすると、同じエンジンの回転数でもタイヤの回転数を増やし、速いスピードを出せるようになります。
変速機がこれらの歯車の組み合わせを切り替えることで、自動車はスピードを変えながら走ることができるのです。
しかし、これでは段階的にしか歯車の組み合わせを切り替えることができません。
そこで新しく生み出されたのが、連続可変変速機(CVT;ContinuouslyVariableTransmission)です。
滑らかな変速で燃費向上へ
CVTは、歯車の代わりにベルトやチェーンなどを用いることによって、無段階にタイヤの回転を調節することができます。
日本精工が開発した、ローラーの角度を変えることで無段階に回転数を調節するしくみをもつ「ハーフトロイダルCVT」は、ラッパの先を2つ、背中合わせにくっつけたようなユニークなかたちが特徴です。
抵抗なく回転するローラーや、強い力を受けても壊れない円盤の開発に、機械の軸の部品をつくる日本精工の技術が応用されました。
回転伝達効率が最大98%と非常に効率がよく、燃費向上に大きな役割を果たすことが期待されています。
自動車から、燃費の心配や排気ガスによる環境破壊といった心配ごとを少しでも取り除きたい。
そんな願いが、ハーフトロイダルCVTには込められているのです。(文・上原政樹)