水素エネルギーで進め、未来へ トヨタ自動車株式会社

水素エネルギーで進め、未来へ トヨタ自動車株式会社

地球上で一番軽い、無色、無臭、無味の気体、「水素」。試験管に溜ためた無色の気体に火を近づけると、ポンッという勢いのいい音を立てて小さく燃える、中学校の理科の実験でおなじみです。この水素のが今、自動車を動かすエネルギーとして注目されています。

石油に代わる、次世代燃料を探して

▲水素と酸素から電気をつくる,燃料電池のしくみ: 燃料電池のマイナス極に水素を供給すると,マイナス極の 触媒上で水素から電子(e- )が放出される。その電子がマ イナス極からプラス極に流れることで,電気が発生する。 一方,電子を放出した水素は水素イオン(H+)となって, マイナス側から高分子電解質膜を通ってプラス側へ移る。 プラス側の触媒上で,酸素と水素イオン,電子が結合して 水になる。

▲水素と酸素から電気をつくる,燃料電池のしくみ: 燃料電池のマイナス極に水素を供給すると,マイナス極の 触媒上で水素から電子(e- )が放出される。その電子がマ イナス極からプラス極に流れることで,電気が発生する。 一方,電子を放出した水素は水素イオン(H+)となって, マイナス側から高分子電解質膜を通ってプラス側へ移る。 プラス側の触媒上で,酸素と水素イオン,電子が結合して 水になる。

20世紀以降、工業化が進み、技術の発展によって世界中に自動車が溢れるようになりました。
主流であるガソリン車やディーゼル車に用いる燃料の原材料は、どちらも石油。
近年、化石燃料の枯渇、CO2の排出による地球温暖化、排気ガスによる大気汚染の増加といった「エネルギー問題」と「環境問題」が進み、重要視されています。
しかし、今すぐ化石燃料の使用を止めるわけにはいきません。
そのため、現在の自動車の燃費を抑えて化石燃料の使用量を減らしつつ、新しいエネルギー源となる物質の検討が進められています。
たとえば、1990年代後半に登場した、ガソリンで動くエンジンと電気で動くモーターの両方を搭載したハイブリッド車は、電気を使う分だけ、ガソリンの使用量を抑えているのです。
化石燃料に代わるエネルギー源、その候補のひとつが「水素」です。
水の電気分解によって簡単に製造でき、その技術はすでに実用化されていることや、貯蔵・輸送ができることなどから、将来の有力なエネルギーとして注目されています。

水素と酸素で電気をつくる

▲燃料電池車の構造図: 燃料電池車には,水素タンク,FC スタック(燃料電池), モーター,パワーコントロールユニット,バッテリー が搭載されている。

▲燃料電池車の構造図: 燃料電池車には,水素タンク,FC スタック(燃料電池), モーター,パワーコントロールユニット,バッテリー が搭載されている。

この水素を使って発電する装置「燃料電池」から生み出された電力で動くのが「燃料電池車」です。
燃料電池は、水素を燃やして発電するわけではありません。
燃料電池のマイナス極に水素を供給すると、マイナス極の触媒上で水素から電子が放出されます。
その電子がマイナス極からプラス極に流れることで電気が発生します。
一方、電子を放出した水素は水素イオンとなって、マイナス側から高分子電解質膜を通ってプラス側へ移ります。
プラス側の触媒上で、酸素と水素イオン、電子が結合して水になります。
排出されるのは水のみ。走行中のCO2排出量をゼロに抑える「ゼロ・エミッション」が、燃料電池車なら達成できるのです。
水素タンクから供給された水素を使って燃料電池で発電された電気は、アクセルの踏み具合に応じてパワーコントロールユニットで電力が調整され、モーターに送られます。
そのモーターの力で、自動車を走らせるのです。
また、バッテリーが備えられており、燃料電池で発電して余った電気を溜めておくことができます。
加速時などは、溜めておいた電気と発電した電気の両方を使ってスピードを上げることができます。
逆に、下り坂 やブレーキをかけたときなどスピードを落とした ときは、タイヤの回転でモーターを回して電気を つくり、バッテリーに溜めておくことができるの です。
ハイブリッド車の開発で磨かれたモーター やバッテリーの技術が、燃料電池車に活かされて います。

これから広がる、水素社会へ向かって

日本では、トヨタ自動車が1992年に燃料電池車の開発をスタート。
「化石燃料は地球の財産。それに頼り切っていてよいのだろうか」という燃料多様化への想いが、研究開発を推し進めました。
トヨタ自動車が開発した高圧水素タンクは、最も内側の層に、強度が高く水素透過防止性能に優れたポリアミド系樹脂が採用されています。
そのほかにも、水素漏れが起きた場合にいち早く検知するためのセンサーを設置したり、車外に拡散させたりするための方法が研究されています。
また、水素タンクの材料の最適化、設計や製造技術の改良などを行って層を薄くし、タンクの内容量は大きく、重量は軽くすることに成功し、満充填で500km以上もの距離を走れるようになったのです。
2015年には、セダンタイプの燃料電池車の販売開始が計画されています。
家や学校などの周りで燃料電池車を見かけるようになるでしょう。
そして、自動車以外にも水素エネルギーが、まちのあちらこちらで使われるようになっていくのです。

取材協力:トヨタ自動車株式会社