【リバネス研究費成果レポート】第7回リバネス研究費 マイクロテック・ニチオン賞
リバネス研究費が始まってすでに4年以上が経過し、採択テーマが論文に結実したケースも徐々に聞かれるようになってきた。今回は、2013年8月1日付で『Analytical Chemistry』で論文が発表された、採択者で東京工業大学上田研究室に所属する大室(松山)有紀氏と同研究室教授の上田宏氏(採択当時はお2人ともに東京大学大学院 工学系研究科 化学生命工学専攻 蛋白質工学研究室)にお話を伺うことができた。
機能の特性を活かしたシステム
ルシフェラーゼによる発光の過程は、ATPを利用したルシフェリンのアデニル化反応と、そこで生じたルシフェリル-AMPの酸化反応の2段階に分かれている。全長550アミノ酸のうち1-437aaのN末ドメインと441-550aaのC末ドメインが協調して、全体の反応が完了する。このことを利用してN末ドメインとC末ドメインに異なるタンパク質を融合したPCA (protein-fragment complementation assay)が、従来から利用されていた。この方法には、ドメインを分割したことによるタンパク質の不安定さや、酵素活性の回復の低さという問題点があった。大室氏らはルシフェラーゼを分割することなく、アデニル化反応のみが遅い変異体と酸化反応のみが遅い変異体にタンパク質を融合して相互作用の検出を行った。ひとつの反応のみを効率よく行う変異体どうしの組み合わせは見事、高い安定性かつ迅速な検出を実現した。
早い反応を捉える
大室氏らが開発したこのFlimPIA (Firefly luminescent intermediate-based Protein Interaction Assay)ではタンパク質どうしの相互作用を迅速、簡便、高感度に検出できる。しかし、その実現には反応開始直後からミリ秒単位で上昇する測定値を精度よく検出できる系が必要だった。ニチオン賞で貸与されていたルミ・カウンターNU-2600はここで一役買うことになる。測定値の上昇をうまく捉え、モデルとして用いていたラパマイシンを使ったFKBP12とFRBの実験では、ラパマイシン濃度と発光強度は見事な一直線の相関性を示した。創薬のペプチドライブラリースクリーニングで力を発揮すると考えているので、多くの人と共同研究を進めることで方法を発展させていきたいと指導教官の上田氏は意気込む。さらに大室氏も「ルシフェラーゼは変異の入れ方で発光したときの色が変わるので、この方法を発展させてマルチカラーの新規のイメージング手法を開発したいです」と新たな可能性を示してくれた。FlimPIAが創薬研究や、新規イメージング法開発に応用される日を心待ちにしたい。