エンジェル投資家から 900 万円の資金を調達する方法
学生ベンチャーとして資本金 350 万円でスタートし、1 年間でエンジェル投資家から 900 万円の資金を調達 したのが株式会社オリィ研究所だ。コミュニケーションロボットの開発という、大手企業も研究開発を進める分 野において投資家を魅了したそのコンセプトと資金調達方法に迫る。
“存在感”の提供が コミュニケーションを成立させる
オリィ研究所が開発したのは、操作する人の分身 となる遠隔コミュニケーションロボット「Orihime」。 病気や怪我などで外出できない人が友人や家族と同じ 時間を共有できるようにとの想いで開発したものだ。 人間の姿をしたロボットにカメラとスピーカーを搭載 するという、ともすると PC で代用できてしまうシン プルな構成でありながら、ロボットならではの“存在 感”でお互いの存在を意識させ、まるでその場にいる かのような感覚を与えることができる点が特徴だ。
ビジネスプランコンテストで軍資金集め
起業前から最低限の資金もなかったオリィ研究所が 取ったのは、ビジネスプランコンテストに参加すると いうアプローチだった。コンテストの締切に向けて試 作品を作成し、実際に病院から出られない人や怪我を した人にロボットを実際に使ってもらうことでフィー ドバックを集めた。ユーザーの生の声を後押しにビジ ネスモデルを構築し、2011 年~ 2012 年の 2 年間で 6 回のコンテストに参加した結果、4 つで優勝、2 つで準 優勝という好成績と 280 万円の賞金を獲得した。この 賞金がオリィ研究所としての最初の軍資金となった。
理念に共感してくれる人をチームに加える
ビジネスプランコンテストで好成績を収めた結果、 様々なところから講演や取材、イベント出展の依頼が 来るようになった。「幼い頃は身体が弱く、友達と遊 んだり、遠足にいけないことがとても寂しかった。そ んな同じような経験をしている人たちに大事な人と一 緒に過ごせる時間を提供してあげたかった」。体験を もとに解決したい課題を話す代表取締役の吉藤さんの 言葉は人々の心を揺さぶる。結果として吉藤さんの周 りには理念に共感してくれる人々が集まった。そして 起業後 1 年間で、シリコンバレーでのバイアウト経験 を持つ経営顧問や医師を務めるメディカルアドバイ ザーなど、経験豊富なアドバイザリーボードを構築す ることができ、彼らがエンジェルとなり出資をしてく れた。 一般的に学生ベンチャーはどんなに想いが強くて も、経験やネットワークの面で信用性は低い。だから こそ、自分の想いを発信し続け、そこに共感してくれ る経験豊富な人材をチームに入れることがその後の資 金調達や企業の発展につながっていく。