日本人の心を持ったブラジル人医師 大間知 オタビオ
大間知 オタビオ さん
M.D. 修士(国際保健学)
プロフィール
サンパウロ大学医学部を卒業(麻酔学専攻)。その後、来日しJICAの奨学金を取得し、東京大学大学院で国際保健学を専攻した。現在は、大阪で日本で医師免許を取るために勉強している。
ブラジル出身の大間知オタビオさんは、子供のころに出会った親戚のお坊さんを通して見た日本に憧れ来日した。「この国で医師になりたいのです。そのために、日本語の勉強を頑張っています」。優しい顔をした彼の口から出てきた言葉から、その顔とは裏腹に力強い意志とたくましさを感じた。「誰もが平等に医療を受けられる世界を創りたい」そんな思いを胸に世界各国で患者さんと関わってきた。
両親の教えを胸に
両親の教育方針や少年時代のボーイスカウト活動を通して、社会とのつながりを大事にしたい、役に立ちたいと思う気持ちが自然と養われていた。国籍・職種・宗教・階級などに関わらず、全ての人に平等に接することを両親は重んじていた。「その教えが私もいつか医師とし
て人を助けたいという想いにつながったと思う」とオタビオさんは振り返る。ブラジルのトップ大学サンパウロ大学の医学部で麻酔学を学び、医学の道を目指した彼は、医師免許取得後、ブラジルで経験を積み、海外で働くことを夢みた。その後JICAの奨学金を獲得し、世界の医療に関する知識を深めるために東京大学大学院で修士課程を修了。ここで難しい選択を迫られることになる。ブラジルへ帰国するか、博士に進学するか、はたまた就職するか。それとも日本での医師免許を目指すのか。彼はこの4つの選択肢から日本で医師になる道を選んだ。日本人の人を思いやる文化が自分の価値観と合致していることもこの選択を後押ししたのだ。
笑顔が原動力
医師を目指すオタビオさんにとっての幸せは、「患者さんの笑顔を見たとき」だ。医療を必要としている人々にサービスを提供したいという強い想いから、2005年、紛争や自然災害の被害者などに医療サービスを届ける「特定非営利活動法人国境なき医師団」に参加。インドネシア、パキスタン、チャド、南スーダン、ソマリアやコンゴなど様々な国を訪れる。日々の生活さえも安定しないような場所に行っての医療活動では、時には機器の設備不足から患者を死亡させてしまうこともあった。そんな困難の中でも、オタビオさんが継続的に活動に参加している。「患者さんの笑顔で私も癒されていたからです」とオタビオさんは語った。
日本で医師になるという夢の実現
「日本で医師を目指すことを決断するのに少し時間がかかったかもしれません。でもそれぞれの経験をしたからこそ見えてきたものがあります。そして自分の夢を実現することができます」。エンジニアを目指した高校時代から、国境なき医師団での活動を経て、日本で医師を
目指している現在まで変わらないことは、医療を必要としている人たちのために仕事をしたい、患者さんの幸せそうな姿を見たいという信念だ。現場の患者の声に耳を傾け、患者とその家族に寄り添うような医師を目指して、オタビオさんは日本語と医学の勉強に日々勤しんでいる。医療が必要とされている現場に行って患者とその家族に幸せを届けるために。 (文・徳江 紀穂子)
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