レアメタル問題を数値化し、眠れる資源を未来につなぐ 橋本 征二

レアメタル問題を数値化し、眠れる資源を未来につなぐ 橋本 征二
理工学部 環境システム工学科 橋本征二 教授

プラチナやインジウムなど,地球上の存在量が少なかったり,技術的な理由で入手が難しい金属は「レアメタル」と呼ばれています。2050年までに多くが不足すると予想されており,対応を迫られています。新たな鉱山の開発や代替素材の探索などが注目されがちですが,そもそも使われたものは,いったいどこに行ったのでしょうか。

橋本先生

都市鉱山,日本のどこにある

レアメタルは,携帯電話やデジタルカメラなど多くの家電製品に使われており,日本は世界有数の「都市鉱山」とされています。では実際のところ,日本のどこに,どのくらいの都市鉱山が存在しているのでしょう。橋本先生は,代表的な小型家電を対象に,日本各地のレアメタル存在量の推計を試みました。すると,可住地面積あたりの量では,東京・神奈川・大阪が他に比べて圧倒的に多いことがわかりました。つまり,これらの地域には,レアメタルを効率的に“採掘”できる鉱山があるということです。しかし,この都市鉱山から有効にレアメタルが回収されているかというと,実はそれができていません。そのほとんどは,焼却や埋立,他の再生金属への混入など,さまざまな形で拡散してしまい,“消えて”使えなくなっているのです。

リサイクルの優先度を決めよう

リサイクルの推進には技術の改善が緊急課題ですが,金属種ごとに手法が異なるため,すべてのレアメタルを一度に回収することはできません。そこで先生らの研究グループでは,1年間の国内の拡散量を需要量(使用した量)で割った「拡散率」という基準をつくりました。その結果,他が数%程度であるのに対し,バリウム,ストロンチウム,ジルコニウムは15~25%の高い数値を示すことがわかりました。拡散率25%というと,1年間に使用されたうちの4分の1は消えてなくなっていることになります。このように,拡散率を見れば,どの金属種からリサイクルに取り組めばよいかの指針を明らかにできるのです。

正しい把握が循環型社会につながる

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先生は拡散率の他にも,いくつかの指標で現状を正しく理解し,次の戦略を見出そうとしています。たとえば,採掘時の環境破壊やエネルギー使用量なども重要な指標です。環境負荷が高いにもかかわらず消えてしまうレアメタルは,緊急にリサイクルの方法を構築する必要があるからです。また,日本だけでなく世界中の都市鉱山の埋蔵量を把握する研究も進めています。
「膨大な書類からデータを抽出・加工して全体像を描き,そこからあるべき道筋を考えるのはおもしろい」と先生は言います。非常に緊急度の高いこの研究は,必ずや未来の循環型社会への大きな礎<いしずえ> となるはずです。

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