サイエンスコミュニケーションをやるときに忘れてはいけないこと
リバネスは研究者の間ではサイエンスコミュニケーションをビジネスにして活動している世にも珍しい会社として認識されている。
私は採用面接を担当しているので、いろいろな採用希望者とお話することがあるのだが、
「サイエンスの感動をみんなに伝えたいから実験教室とか伝える活動をしたいんです」という志望動機がよくある。
これから書くことは誤解を受けそうだがら最初に言っておくと、それ自体は全く悪いことではない。
私たちもサイエンスが大好きな人間が集まっているので、サイエンスが好きなことはそもそも前提にあるし、
はじめは「こんなすばらしい学問を知らないなんてもったいない」とか「子どもたちを理科好きにしたい」という情熱を持って活動を始めている。
サイエンスが好きで伝えたい、というパッションを持つことは大事なことだ。
でも私達は本当の意味でサイエンスコミュニケーションを通してサイエンスに理解がない、とされる一般社会の現状を変えたいなら、それだけでは不十分だと思っている。それではまだ一人よがりだし、共感する人は少ないだろう。ましてや一緒に行動してくれる人はもっと少ない。
社会を変える・現状を変える ということはその中に課題を見つけ、それに取り組むことに共感してくれる仲間を増やすということである。
そのために必要なことは「なぜサイエンスを伝える必要があるのか」を突き詰めることだ。
どんな社会課題を「サイエンスを伝える」ことで解決できるか。サイエンスを伝えることはあくまでも手段だ。
自分のビジョンがあること、が仲間を増やしていく秘訣だし、ビジネスとして成り立っている所以である。
こう書くと、「サイエンスは人類を幸せにするんです」という人がとても多いけど、それは宗教みたいだ。
なぜ?どうやって?そうするのかを説明できないとダメだ。音楽だってスポーツだって人類を幸せにする。サイエンスだからできることがあるはずだ。
そのためには社会を知る必要があるし、その上で、「科学でできること」を自分の言葉で語れる必要がある。
リバネスでは「栽培学を広めることで日本の自給率に貢献したい」と考えている人もいるし、「研究者の活躍の場を増やすことで社会に研究者を浸透させたい」と考える人もいる。どんな場所の課題をどうやって解決するかは人それぞれ。でもベースは「サイエンスを伝える」手段を使って解決している。
リバネスにかぎらず、本当にサイエンスコミュニケーションで生きていきたいと思っている人、いや、サイエンスコミュニケーションをひとりよがりの活動にしないためにも、みなさんに知っていただきたい考え方だと思っている。