養殖のアコヤガイが真珠をつくる謎。ゲノム研究まとめ

養殖のアコヤガイが真珠をつくる謎。ゲノム研究まとめ

さて、先日アコヤガイから真珠を取り出す実験をして、大興奮の結果を得た。では真珠ってどうしてできるのか?養殖で作れちゃうってすごくない?と思うわけです
宝石を手に入れる実験大公開! アコヤガイから真珠をGET〜ダイゴの大実験Part.3 | サイエンスメディアsomeone(サムワン) 理系大学の研究者カタログ by リバネス

 

だが、日本のアコヤガイ養殖技術、実は「なぜ真珠ができるか」はよくわかっていなかったというのだ。
養殖では、アコヤガイの外套膜(がいとうまく)の一部を切り取り、貝殻で作った「核」と一緒に、別のアコヤガイの生殖巣内に移植する。この結果、核を包み込む「真珠袋」が生成される。その内部で、核の表面上に真珠層が作られていき、半年以上かけて美しい真珠ができる。外套膜は貝殻を作る器官。だが、生殖巣内に入れた組織が、どのように真珠の形成に関与しているのかは分かっていなかった。
この仕組が科学的にわかれば、アコヤガイを病気から守ったり、より美しい真珠をつくったり、とんでもなく巨大な真珠を作ることも可能になるかもしれない。

遺伝子研究<1>真珠をつくる遺伝子を解析

アコヤガイの体内で真珠がつくられる際には、いったいいくつの遺伝子が関与しているのだろうか。東京大学・渡部終五教授らの研究チームとミキモトグループとの共同研究チームは、日本固有のアコヤガイを対象に、2007年より真珠形成の遺伝子を網羅的に追求してきた。
2011年、このチームは真珠が作られている時に働くほぼ全ての遺伝子情報を取得することに成功。これまで知られていた遺伝子情報の約100倍に達する新しい情報を得たという。これまでに真珠層を構成するタンパク質として報告されているものは20種程度であったが、新しく50種以上ものタンパク質の遺伝子を同定するという記録的成果を得た。
今回の成果は、真珠層形成がどのようにアコヤガイの体内で行われるのか、その仕組みを解明していく大きな一歩であるとともに、日本固有のアコヤガイに潜む、美しい真珠を産み出す秘密を明らかにする手がかりになると期待されました。

遺伝子研究<2>アコヤガイのすべての遺伝子を解読

翌年、東京大学の渡部先生らは、アコヤガイのゲノム解読に成功したと発表する

アコヤガイゲノムDNAは、約11億塩基対(ヒトの約1/3)からなり、超高速シーケンサーによりDNAデータを取得し、スーパーコンピューターを利用することで、アコヤガイゲノムの膨大なDNAデータの解析を行いました。解析の結果、アコヤガイゲノムには少なくとも23,257個の遺伝子が存在することがわかりました。得られたゲノム情報は、これから真珠のできる仕組みを解明する上で役立ちます。

当時、このアコヤガイのゲノム解読研究は、軟体動物のゲノム解読としても世界初の学術論文であった。軟体動物とは、カキ・アワビ・イカ・カタツムリなどを含む、海・河川・陸地など様々な環境に生息するきわめて多様な動物グループのこと。軟体動物には水産資源としても重要な生き物が数多く含まれているにも関わらず、これまではゲノム情報が無かったということもあり、他の動物グループに比べて研究が進んでいませんでした。このアコヤガイゲノム解読により、軟体動物の研究が飛躍的に進展することが期待されています。

さらに、この発表の半年後、リバネスの取材班が渡部先生を取材した。ゲノムの話ではないが、そのときの記事が℃」をめぐる魚と研究者のものがたり 渡部終五です。

「℃」をめぐる魚と研究者のものがたり 渡部終五 | サイエンスメディアsomeone(サムワン) 理系大学の研究者カタログ by リバネス

 

遺伝子研究<3>移植した外套膜の遺伝子は働いているのか?

そして、2013年3月、独立行政法人水産総合研究センターが「真珠100 年の謎をついに解明-日本で開発したアコヤガイ真珠養殖技術を初めて科学的に証明-」と発表した。これは、養殖の時に移植した「核」の遺伝子が、移植したあとにも働いていると発見した論文で、移植する前のアコヤガイの遺伝子を操作したりすることで真珠のできばえをコントロールできるといえる。

いつか、巨大真珠を養殖で作れちゃう日もくるだろう!