ビッグデータに隠れた 未来を見つけるパートナーを求めて

ビッグデータに隠れた 未来を見つけるパートナーを求めて

日本ユニシス株式会社 社会基盤事業推進部  EHRビジネス推進室長  竹中  暢  さん

|プロフィール|
1992年に日本ユニシス入社。医療機関向けシステ ム開発・導入を担当し、ヘルスケアシステム部課長、 ヘルスケアビジネス部課長を経て2012年より現職

 コンピュータ黎明期である1958年に設立されて以来、高い技術力を活かして常にユーザが満足するようなICTソリューションを提供してきた日本ユニシスグループ。エッジの効いた研究者とのコラボレーションを促進するため、「リバネス研究費日本ユニシス賞」を設立した。募集テーマは「生体データ解析に関わる全ての研究」。ICTを活かした新しいヘルスケアシステムの構築を目指す同社社会基盤事業推進部の竹中暢さんに、本研究費にかける想いを伺った。

 

やわらかい社会基盤の 構築に向けて

 現代の様々な社会課題をICTで解決するために、日本ユニシスグループは新しい社会基盤の構築・整備に着目している。 社会基盤とは、産業や生活の基盤となる 設備やシステムのことだ。電気、ガス、 水道の供給施設や、交通機関、そして病 院など従来の設備型インフラは私たちの 生活を豊かにしてきた。しかし、日々目 まぐるしく状況が変化するこれからの時代には、随時最新のデータを取り入れ、 それによって出力を変えるソフト型の可 変的なインフラが必要になってくる。竹 中さんが所属する社会基盤事業推進部は 2012年の立ち上げ以来、医療・ヘルス ケア、環境・エネルギー、金融、物流、 都市環境など、あらゆるフィールドを舞 台に、ICTを活用した「半歩先」のイン フラとサービスを創ることを目指してき た。人々が求める少し先のバランスを常 に見据えているのだ。

 

データの蓄積から 未来のヘルスケアを創る

 様々なフィールドがある中で、竹中さ んたちが今注目しているのは、医療・ヘ ルスケア領域の新しいインフラの構築だ。「現代日本で、解決すべき課題の最 たるものが超高齢化社会でおきる医療費の増大です。」と竹中さんは語る。日本の医療費は年間38兆円を超え、さらに増大傾向と危機的状況だ。社会全体の健康増進を目指すビジネスの創出は急務だが、未だ実現に至ってないといえる。その理由を「日本では、個人を中心としたヘルスケアデータを集積するという土壌がない。」と竹中さんは分析する。増え続ける医療費の削減のためには、病気になる前に心身をケアする予防医療の観点が重要だ。膨大な個人データの集積が叶えば、生活習慣、生活環境、そしてゲノム情報と関連付けて、健康状態を把握することができる。この関連性から、個人に合わせた効率的なオーダーメイド型の 予防医療を構築することができる。つまり、ヘルスケアデータの集積こそが、医療費増大を解決するための最適手となりえるのだ。

 

地域で実現する 生体データの大量集積

 日本ユニシスグループが前述の課題に取り組んだ一例として、京都大学と滋賀県長浜市と共同で推進する「ながはま0次コホート事業」がある。コホートとは同様の条件にある集団のことだ。この事業では、長浜市の住民の検診情報や 臨床データ、さらにはゲノム情報をデータベース化し、集積した情報に基づいて 病気との因果関係を明らかにすることを目的としている。目的が達成されれば、個々人に最適な医療行為が定義でき、オーダーメイド医療の実現に向けて 前進する。このプロジェクトでは、1万人を超える参加者に対し、700以上の項目を調査し、5年ごとの追加調査を予定していることから、膨大なユニークデータを集積できることは言うまでもない。 データ中には、カルテに記載された文字や、画像データなど非構造化データも多く、最新のデータ解析技術が用いられた。 そしてデータの取り扱いには個人情報保護の観点から、非常に高いセキュリティが要求された。「このようなシステムの実現には日本ユニシスグループが医療情報分野において長年蓄積した技術とノウハウが活きています」と竹中さんは断言する。高い技術力があるからこそできるビッグデータの集積、その解析から生まれる新たな知見の中に、まだ見ぬオーダーメイド型の予防医療の新指標が隠れていると考えている。

 

求められるのは高度な解析手法とそれを実現する人

 日本学術会議では前述のようなコホート事業を推進することが提案されている。全国10か所で10万人程度のコホート事業を行う「100万人ゲノムコホート
研究」だ。医療・ヘルスケアの研究の促進にビッグデータは欠かせなくなっている。一方で課題もある。外部の医療情報や研究情報を加えることが考えられるそのシステムは、複雑化することが目に見えているのだ。外部のデータベースは、書式も違えば、データの過不足も生じる。 データベース同士の不一致をどう解消するかなど、統合に必要な知見は、常にアップデートされなければならない。「複雑かつ大量の生体データを解析・統合できる方法、理論、人材の全てが必要だ」と 竹中さんは訴える。そこで今回の研究費では、これらの課題をクリアできるアイデアを求めているのだ。 今回のリバネス研究費に募集してくる研究者に期待されているのは、専門家としてのエッジだ。アカデミアの研究者は専門性を発揮し、研究に注力する。そして、企業側は事業の強みを活かすだけで なく、マネタイズも含めたプロデュースを行う、そんな関係を望んでいる。「専門家のプライドをもった、上から目線大いに結構です」と竹中さんは言う。求めるのは対等にデータの中から未来を見つめることができるパートナー。複雑な生体データを扱う猛者のチャレンジを待っている。

 

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2014年8月30日〆切の研究費、「リバネス研究費 日本ユニシス賞」詳細はこちら