町工場デジタル工作機械でつくる 「ものづくりラボ」〜研究活性化計画『EngGARAGE*04』
近年のメイカーズムーブメントにより、様々な地域にものづくりをキーワードにしたコミュニティスペースが誕 生している。多くの施設が「手軽なものづくり」をテーマに掲げる中で、町工場発のマニアックなものづくりス ペースを開設したのが金属加工・試作を主事業とする浜野製作所の「ガレージスミダ」だ。連日、大手企業の技 術者や研究者、デザイナー、ものづくりベンチャー、行政関係者など様々な人々が見学に訪れている。
デジタル工作機械が補完する力
ガレージスミダに設置されている機械は、樹脂溶解 積層式と光硬化式の2 種類の3D プリンタ、樹脂や木、 ゴムなどの加工と金属や樹脂へのマーキングができる レーザーカッター、CAM データを作成することなく 気軽に切削ができるCNC 加工機、そして分析用の画 像寸法測定器や3D スキャナなど。最近のものづくり スペースでもおなじみの機械が10 坪ほどの部屋の中に並んでいる。注目すべきは、そこのスペースから道 路を挟んだ向かい側に本物の工場があることだ。そこ には金属を焼き切る高出力のレーザーカッターやマシ ニングセンタ、大型プレス機など、ほとんどの金属加 工ができる機械が立ち並び、ものづくりのプロたちが 日々働いている。既存のものづくりスペースのように、 個人で機械を利用することも、町工場のプロにものづ くりの相談をすることもできるため、どんなレベルの ものづくりにも対応できる体制が整っている。
作る場所から学ぶ場所へ
そもそも、メイカーズムーブメントの根幹にあるの は「ものづくりの敷居が下がる」こと。しかしながら、 実際にものづくりに挑戦すると、3D プリンタやレー ザーカッターでできることと、町工場でできるものづ くりの用途の違いに気づく。特に耐久性や機能性を考 慮した設計には材料や構造への理解が必要であり、独 学で習得するのは困難だ。そんな中でガレージスミダ が提供するのは、「作れる場所」ではなく、「ものづく りを相談できる場」という価値だ。これまでにも浜野 製作所は、深海探査船「江戸っ子1 号」や電気自動車「HOKUSAI」、「リアルロボットバトル日本一決定 戦!」への参戦をはじめ、研究者や大手企業、テレビ 関係者など、様々な異分野の人々と連携してきた。新 しいものづくりに挑戦してきた中で感じてきた、異分 野の人々が持つものづくりに対するイメージ感を知る 同社だからこそ、無料で見学を受け入れ、3D プリン タ等で下がった敷居の先にあるものづくりの奥深さ、 面白さ、難しさを学べる場所を提供している。
集まれ、ものづくりベンチャー
そんなガレージスミダが力を入れていることの一つ に、ものづくりベンチャーの育成支援がある。多くの ものづくりベンチャーの悩みの種が作業スペースの確 保。安定した収入のない初期の段階でどうやって開発 スペースを確保しようかと悩むチームも多い。これま で、ガレージスミダでは、ロボットベンチャーのオリィ 研究所にガレージスペースを貸し出した上で、開発へ の協力はもちろん、登記場所として提供し、さらには ものづくりの指導までも行ったという。浜野製作所が 持つ全国各地のものづくりネットワークに加え、もの づくりベンチャーをはじめとした起業家や新規事業開 発担当者と連携することによって、新しい製品・サー ビス・事業を創出していく発信拠点を目指している。
全国の町工場が次々と閉鎖し、ものづくりの衰退が 危ぶまれる中で、ガレージスミダの取り組みは新しい ものづくりの輪を広げるきっかけになるはずだ。
Garage Sumida (ガレージスミダ)
運営:株式会社浜野製作所 所在地:東京都墨田区八広4 - 39 - 7
TEL:03-5631-9111 Mail:[email protected]