チンパンジーもベッドにこだわる!?
樹の上で生活をするチンパンジー。もちろん 眠るときも樹の上です。しかも,自分で枝を集め てきてつくったベッドの上で眠るのです。
アメリカ,ネバダ大学の人類学者,デイビッド・サムソンさんは,アフリカのウガンダ西部にある 野生生物保護区内のチンパンジーが寝床に使って いる樹木の種類を調べました。
すると驚くことに, 調査地域にある樹の全種類のうち,たった 9.6% しか占めていないウガンダ・アイアンウッドという樹木が使われていることがわかりました。なぜ,眠るという日常的な行為のために,こんなに希少な樹木を使うのでしょうか。
詳しく調べてみると,この樹はただ丈夫なだけではなく,他にもベッドに適した特徴をもっていたのです。
アイアンウッドは,太い枝から細い枝が,せまい間隔でたくさん出ているため,枝どうしを高 密度で編み込めることがわかりました。また,枝 の周りに生えているたくさんの小さい葉が,ベッ ドから飛び出している枝の露出を防ぎ,枝と枝が 組み合わさっている部分ですべり止めの役割をし てベッドの構造を強くしているのです。
サムソンさんは,次のように考えています。
「チンパンジーは,私たちと同じように快適な眠りを 求めているのでないか」と。
ベッドをつくるとい う行動は,人類を含むチンパンジーやゴリラといった大型類人猿に特有のものだといわれています。丈夫で快適なベッドをつくって眠るようになった結果,夜の眠りの質が向上し,脳の大型化につながった可能性が考えられているのです。
「寝る子は育つ」ということわざがありますが,質のよい睡眠は,からだだけでなく脳も育てているのですね。
(文・花里美紗穂)