数学が教えてくれる世界の方程式 赤堀 次郎
立命館大学理工学部 数理科学科 赤堀 次郎 教授
単元に関係するキーワード 社会と情報「モデル化とシミュレーション」,数学「確率分布と統計的推測」
世の中に絶対と言えるものがどれだけあるでしょうか。少しでも不確実性があれば,そこは確率論の出番です。たとえば,降水確率。正午から午後6時までの降水確率30%,さてどういう意味でしょう。6時間のうち30%の1時間48分は雨が降る?それとも,その地域では30%の場所で雨が降るのでしょうか。答えは,その予報が100回出されたとき,およそ30回は1mm以上の降水があるだろうという意味です。この「だろう」はサイコロの確率の扱いと同じ意味です。100回サイコロを振って1が出る回数が1/6くらいである確率はかなり大きいですが,絶対にそうなるとは言いきれません。しかし,試行回数を増やせば増やすほど,確率で示される値に実現値は近づいていきます。世の中は不確実なことばかりですが,「そんなところに思わぬ規則が見つかるとおもしろい」と赤堀先生は話します。
金融商品も,そんな不確実性をたくさん含んだ複雑なものです。たとえば,「特定の未来の期日に,特定の条件を満たせば,決められた売買をする権利」の価格の決め方。こう文章で説明しただけで,不確実性が多いことは疑う余地がありません。「複雑でよくわからないものを数学的に表現すれば,単純なものとの共通点を見い出すことができ,すっとわかるようになります」。そうして,金融工学の発展を数学者たちが導いてきたように,不確実な世界をすべて研究対象にする先生が,世界の方程式を見つける確率は,さてどれほどでしょうか。
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因数分解で苦戦した後,解の公式を知ればあっという間に解けるようになるように,少しレベルの高い数学を学べば,それまでの知識では難しかった問題に簡単に解が見つかったりします。
このように,より高いレベルから物事を見て,それを問題解決に活かすという数学の本質は数学以外のもっといろいろなことに応用ができます。金融業界や保険業界に限らず,数学を活かせる場所はたくさんあるので,たくさんの人にもっと数学を親しんでもらえるとうれしいですね。