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逆転の発想で,再生医療に革命を起こす 川村 晃久

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生命科学部 生命医科学科 川村 晃久 准教授
単元に関係するキーワード 生物「生殖と発生」

たったひとつの受精卵が分裂を繰り返すたびに個性を獲得し,それらが数十兆個集まることで私たちのからだを形成しています。これらの細胞が,いつ,どのように個性を獲得するのか,いまだに謎の多い「細胞の運命」を理解し,自由に操ることができるとしたら,失われた臓器の再生や,新たな病気の治療法など,その可能性は無限に広がっていくはずです。

不可能を可能に変える,再生医療

心筋細胞には,他の細胞とは違う大きな特徴があります。それは,生まれてから死ぬまで,ほとんど分裂せずに働き続けること。そのため,心筋梗塞などの病気で細胞が失われてしまうと,二度と取り戻すことができないのです。しかし,失った組織を元通りに戻す再生医療が実現すれば,従来の薬や手術では不可能だった心臓の治療を実現できます。

2006年に発表されたiPS細胞作製技術は,その現実味をいっきに高める大きな研究成果でした。皮膚などからつくられたiPS細胞は,さまざまな細胞になる能力を持つため,心筋細胞をつくりだして心臓へ移植することで,機能を回復することができる可能性があるのです。

再生医療の新たな形を目指して

しかし,iPS細胞を使った再生医療の実現には,まだ多くの課題があります。たとえば治療に必要な量の細胞を用意するには,数ヶ月にわたり高価な試薬を使って培養する必要があり,実用化に向けた大きなハードルになっています。そんな中,川村先生が挑戦しているのが,ダイレクトリプログラミングと呼ばれる新しい手法です。皮膚などの体細胞からiPS細胞を経て別の細胞に変化させる現在の手法と違い,特定の試薬や条件下で培養することで,心臓やその他目的の細胞を直接つくり出すことができます。

「いずれは,遺伝子や薬剤を導入することで,患部を直接再生できるところまで発展させたいですね」。

生命現象への理解が切り開く未来

皮膚や内臓など,一度個性を獲得した細胞が,さまざまな細胞になる能力を取り戻すiPS細胞化。一度進んでしまった運命の針は,どのようにして巻き戻されるのでしょうか。その過程で起こる代謝やエネルギー状態などを追いかけながら解析を続けることで,細胞の運命を自在に操る技術の確立を目指します。

研究を進める中で,iPS細胞になりきれなかった,いわば失敗作の中に,「適度な万能性」を備えた幹細胞が多数あることを新たに発見しました。「まるでゴミ箱から宝物を見つけた感覚ですね」。特定の種類の細胞にだけ誘導できるこの幹細胞をうまく使えば,ダイレクトリプログラミングによる再生医療研究も大きく前進するはずです。

細胞の運命をコントロールする,そんな究極ともいえる再生医療を実現させるため,今日も研究室で細胞と向き合います。

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