悩むくらいなら変えてみたらいい -みんなの研究室選択~環境を変えるという挑戦-
研究をする上で、研究室や専攻、大学院など、研究環境を途中で変える選択肢を考えたことはあるだろうか。今までの環境を変えて、新たな場所に挑戦することは、研究キャリアにプラスなのだろうか?日本では、同年代の研究者のうち、研究機関の移動経験のある人の方が、PIになる割合が高いことを示す調査結果もある。実際に博士や修士で大学院を変えた人たちは一体どんなことを考え、変わった先で何を得たのだろう?本連載は、充実した研究キャリアを送るための、進路変更のススメだ。
設楽 宗一朗 さん
進学変更時期:学部から修士課程進学時
前の所属 :立命館大学情報理工学部生命情報学科分子生理学研究室
今の所属 :京都大学ウイルス研究所生体防御研究分野(日本学術振興会特別研究員DC2)
先輩の一言:悩むくらいなら変えてみたらいい
Q1 研究分野や大学院を変えようと思ったきっかけは何ですか。
もともと自分が小児ぜんそくという病気を患っていたというのもあり、病気に関する研究をしたいと思っていました。前の研究室で癌について調べているうちに「そもそも人は何で病気になるのか」ということに疑問を持つようになり、それを追求できる免疫という分野への転向を考えました。大学を変えようと思ったのは大学受験のときに不合格だったから、リベンジしたかった、というのもあります(笑)。
Q2 どうやって研究を選びましたか
学部時代の研究室で博士課程の先輩に指導してもらっていましたが、その人が自分自身で考え、実行するタイプの人で、とてもおもしろそうに研究していました。だから、主体的に研究できる環境や雰囲気があるかどうかを見ていましたね。気になる研究科の説明会に参加して、研究室訪問をし、研究室にも何度か足を運んで選びました。今だったら、大学自体の金銭面でのバックアップ体制がどうなっているのか、研究室の科研費獲得状況など、現実的なところも見るかもしれませんね。
Q3 実際に大学院を変えてみてよかったことや大変だったことは何ですか?
良かったことは入ってくる情報の量や種類が全然違うこと、異なる分野の人たちに出会うことが多くなって、得られる刺激が非常に大きいこと。今までと異なるものの見方ができることがすごく楽しいです。新しいことに挑戦することに対してのハードルも下がったので、より積極的に動けるようになったと思います。一番大変だったのは研究の捉え方、視点の違いに慣れることでした。例えば癌の研究ではその体の一部から物事を考えるけど、免疫の分野では身体全体での動きを考えます。先生や先輩、時には後輩と議論して、一生懸命自分でも考え続けたことで身についたと思います。慣れるまでは時間がかかるものだと、長い目で見るようにしていました。
Q4 読者へのメッセージをお願いします。
新しい環境に飛び込むことには不安があるかもしれませんが、新たな出会いや考え方や価値観、今まで知らなかったことを知ることは純粋に楽しいですよ。動いたからこそ初めて見えることもあります。自分に合っているか合っていないかなんて、やってみないとわからないものです。
記者のコメント
新しい刺激は多くの研究者にとって必要な刺激。新しいものや考え方に触れることが心の底から好きな設楽さんだからこそ、思い切って新しい場所に飛び込み、その経験を自分の研究キャリアの糧にできているのだろう。 多羅尾あさみ(武庫川女子大学 薬化学Ⅰ研究室)