[生産現場レポート]産業用大麻(ヘンプ)の 生産現場から 菊地治己( @HokkaidoHempNet )
(社)北海道産業用大麻協会代表理事 菊地治己 氏
一般的に”大麻”と聞くと、薬物を思い浮かべる人がほとんどだが、実は現在ヨーロッパやカナダ、オーストラリアを中心に薬効成分をほとんど含まない産業用大麻を商業利用する動きが注目を集めている。日本でも数少ない研究者免許を取得して試験栽培を行うのが東川町の菊地さんと(有)松家農園代表の松家源一さんのお二人だ。
25000種類の生活用品・工業製品になる
ほとんど知られていないが、大麻草の用途は非常に多様だ。一説には、25,000種類の製品を作れるとも言われている。大麻草は茎から取れる繊維部と木質部、種子の3つの原料を出発点に、衣料、食品、化粧品、紙、建材、複合素材、燃料、潤滑油、肥料、飼料、さらに葉や花穂も利用できれば医薬品や抗菌剤、天然農薬や香料などもつくれる。さらに3ヶ月で3メートルに成長する生産性の高さがあり、素材としてのポテンシャルは極めて高い。さらにこれまで規制の対象であったことから未活用資源であることも踏まえ、海外では1990年代に入り日本とアメリカ以外の主要先進国で解禁となった。EUでは全農地の14%も占める遊休地を活用するために大麻(ヘンプ)を活用する動きが取られている。
北海道に新たな産業を興す
そんな大麻のポテンシャルに惹かれた菊地さんは、2011年3月に上川農業試験場を定年退職したあと、2012年2月に北海道ヘンプネットを、昨年の8月には一般社団法人北海道産業用大麻協会を設立。東川町の農家である松家さんとともに民間では北海道初となる大麻研究者免許を取得し、昨年から東川町の委託を受けて試験栽培を開始した。春に10aの土地に約2600株を人手によって移植し、秋の収穫では乾物重にして26〜30t/ha程度の収穫を得て、ビートやデントコーン以上の乾物生産能力を示した。一方で登熟期間の積算温度不足や降霜、降雪の影響で稔実歩合は極めて低く、採種用の1140株から種子はわずか1.2kgしか得られないという課題も残った。
大麻は大麻取締法により免許なしでは研究者でも研究を行うことができない。菊地さんらは北海道大学名誉教授の松井博和氏の指導により、大学との共同研究も進めている。未利用資源である産業用大麻を事業化するためには大学や企業との連携は欠かせない。彼らは今、協力してくれる研究者を求めている。