アジサイの花が葉っぱになるのはなぜ? 前島 健作

アジサイの花が葉っぱになるのはなぜ? 前島 健作
リカちゃん

アジサイの花はカラフルできれいだね。
ユウくん

土が酸性かアルカリ性かで,花の色が青かピンクか変わるらしいね。
リカちゃん

この前,花が緑色の葉っぱみたいなアジサイを見たよ。あれも土のせいかな?
ユウくん

それは土のせいじゃなくて病気みたいよ。

その疑問,私がお答えしましょう!

アジサイの花が葉っぱになるのはなぜ?

前島 健作 さん
 6〜7月頃になると,アジサイが青や紫,ピンク色の花を咲かせます。生えている場所の土の酸性度によって花の色が変わることはよく知られていますよね。

時おり,葉っぱのような緑色をしたアジサイの花が現れることがあります。めずらしい緑色のアジサイとして好んで育てる人もいますが,それは,じつは「葉化病」という植物の病気にかかったアジサイかもしれません。葉化病は「ファイトプラズマ」という細菌が原因の植物病です。アジサイの葉化が細菌による病気であることは1990年代にはわかっていましたが,感染によりなぜ花が葉っぱのようになってしまうのか,そのしくみが明らかになってきたのは最近のこと。

植物の花は,もともと葉である器官が変化したものです。葉から花ができるしくみは,A,B,C,Eの4つの遺伝子によりコントロールされており,「ABCEモデル」と呼ばれています。遺伝子AとEが働くとがくに,AとBとEで花弁に,BとCとEではおしべに,CとEならめしべに変化するのです。

ファイトプラズマが植物に感染すると,その細胞の中で「ファイロジェン」というタンパク質を分泌します。なんと,これが,葉っぱのような花をつくる犯人でした。遺伝子AとEからできたタンパク質の分解を引き起こし,葉ががく・花弁に変化するのを妨げていたのです。

葉化のしくみがさらにくわしく解明できれば,遺伝子操作によって品種改良された緑色のアジサイも楽しむことができるようになるかもしれません。

リカちゃん

植物の病気のしくみって,まだよくわかっていないことが多いんだね。
ユウくん

緑色のアジサイが花屋さんに並ぶ日が来るのが楽しみだね。

(文と構成・瀬野 亜希) 取材協力:東京大学 大学院農学生命科学研究科 特任助教 前島 健作 さん