トークセッション「群馬から新産業を生み出すためのエコシステムとは」の採録記事を公開しました。

トークセッション「群馬から新産業を生み出すためのエコシステムとは」の採録記事を公開しました。

群馬から新産業を生み出すためのエコシステムとは

株式会社リバネスは、群馬県、株式会社群馬銀行、しののめ信用金庫、国立大学法人群馬大学、公立大学法人前橋工科大学、独立行政法人 国立高等専門学校機構群馬工業高等専門学校と、ぐんま次世代産業創出・育成に関する連携協定を2021年3月12日付けで締結し、新たにコンソーシアムを設立しました。なお、2021年3月26日(金)13時より群馬県庁官民共創スペース「NETSUGEN」にて本件に関する記者会見と、特別イベントが開催されました。

(本記事は、特別イベント内で行われたトークセッションを採録したものです。)

<登壇者 ※敬称略>(左から)
株式会社リバネス 代表取締役副社長CTO 井上 浄
株式会社群馬銀行 常務取締役 井上 聰
群馬県副知事 宇留賀 敬一
しののめ信用金庫 理事長 横山 慶一

 

【井上浄】先程の講演でご紹介したとおり、設立された「ぐんま次世代産業創出・育成コンソーシアム」では、2021年度より、大学や企業で生まれる科学技術の社会実装を促すプログラムとして「ぐんまテックプランター」を実施します。そして、10年間で次世代産業のたねを生み出し、育成するエコシステムを”群馬”に構築する取り組みです。

 

まずは、登壇いただいた各機関が群馬について認識している課題や、可能性など教えていただけますでしょうか。

【宇留賀】群馬県は、GDP全体における製造業の割合が4割を超えるくらいものづくり関連産業の集積があるというのが一つの特徴ですね。建設業も盛んですし、農畜産物も東京という大市場が近くにあるのでとても栄えています。ただし、製造業でいうとやはり中国など海外に押され気味ですし、建設も地震へ備えた技術向上が必要です、そして農業現場では高齢化や人手不足など、いくつかの課題があります。また、ビジネスマーケットはどんどんグローバル化が進んでいますので、技術をさらに高めて世界で戦える品質、価格を作っていく必要がありますね。

【井上聰】井上CTOは高校の同窓であり、わたしの後輩になるわけですね。ぐっと親近感が増しました。さて、課題ということですが、直近ではやはりコロナの影響が深刻です。従来銀行が行う支援というと融資が中心でしたが、例えば、わたしどもは3万社程度の取引先があり、このコロナで特に温泉地、観光、ホテル、旅館などは大変な状況です。今後は、資金繰り支援だけではなく、非接触・非対面での運営など新しい技術の導入や、本業の支援などが重要と考えています。そのために、新しい技術を育てようと、3年間の中期計画で2000件の創業を支援しようと掲げています。

【横山】群馬の特徴という観点から、述べたいと思います。群馬県は、適度に都会で適度に田舎なのが魅力ではないかと思います。災害も少なく、首都圏からの交通利便性も良い。しかし中心である前橋、高崎からすこし外へ出ると、高齢化や人口減少による人手不足など課題感がぐっと高まってきます。そこには、健康増進のための新たなケアや、ロボットによる作業負担軽減など、これまでにない様々な技術を導入していかないといけない。その技術は、例えば群馬大学や、前橋工科大学、群馬高専の中にあるかもしれない。県内に、良い面と課題感と両面あるのが、ある意味ポテンシャルだと思っています。県内で実証試験して試験的な導入などを進めていけると良いのではないでしょうか。

【井上浄】ありがとうございます!群馬という地域がもつ課題や可能性がすこし見えたように思います。では、そのうえで、どのようなエコシステムを構築していくべきか、について意見を伺えますでしょうか。特に、各機関がすでに取り組んできたものと、ぐんまテックプランターと連携できるようなアイデアがありましたら、ぜひ教えてください。宇留賀様からいかがでしょうか。

【宇留賀】県はいまDX(デジタルトランスフォーメーション)推進によって、あらゆる産業の変革を促そうとしています。そして、その狙いは単純なデジタル化だけではく、研究開発を促進して競争力を高めたいというのがあります。特に、中小企業がなかなか研究開発に力を入れられていない状況があります。実際、群馬県の政策でも研究開発支援のポーションが大きくありません。だからこそ、このコンソーシアムを活用して、地域の大学や高専と組んだり、自治体と連携した実証試験をしたりして、研究開発を進めて競争力を高めてほしいという狙いがあります。

【井上浄】ありがとうございます。まさにそうですね。他地域でのテックプランターでは、参加チームに対して、既存の補助事業等の活用を促したり、パートナー企業など県内企業との連携を加速したりしている例があります。また公立の病院と連携して医療実証へ進んだ例もあります。ぜひ、今後コンソーシアムと連携した支援体制の構築についても議論していければと思います!では井上聰様お願いします。

【井上聰】実は、8年前から「ぐんぎんビジネスサポート大賞」を始めており、これまで1920件くらい応募がありました。これは、プランを表彰して終わりではなく、すべてのプランの事業化を目的にしております。これまで45%にあたる約850件に対して事業化モデルを議論し、金融支援だけでなく販路拡大なども手掛けてきました。その結果、相応の創業もみられました。ビジネスサポート対象を通じ研究者の方々から、資金繰りや事業計画などがわからないという声が多くありました。コンソーシアムでは、大学などで見つけた技術のたねを上手く芽出しして育てていく、そんな仕組みの構築に向けて動いていきたいと思っております。

【井上浄】ありがとうございます。1920件はすごいですね。また約半数に対して具体的な支援ができているのも素晴らしいと思います。仰るとおり、大学の先生は、最先端の知識や技術はありますが、経営経験はない方がほとんどです。しかしながら、みなさん優秀なので、ビジネスを学ぶスクールのようなサポートで、優れた経営者になられる方が多いのも、他地域の取り組みで見えてきました。群馬でもぜひ、地域金融機関と連携してそのような取り組みをできればと思っています。

では、横山様お願いします。思えば、このぐんまテックプランターの構想は、横山様との議論から始まったものです。そして、先行している他地域での取り組みも見に来ていただいて、やっと群馬での開催へと至りました。本当に感無量です。もちろんここからなわけですが、横山様にはぜひ、「テックプランターは研究者のための取り組みなんだ」という点を共有いただければと思っております。

【横山】はい。思い起こせば、ぐんまテックプランターや本コンソーシアムの設立は、2年前に井上CTOと初めてお会いした時に、10年、20年先の群馬の未来について語り合ったことがきっかけでした。そしてその後、他地域での取り組みも拝見しまして、研究者の方が熱く、ワクワクしたプレゼンテーションをされていたのがとても印象的でした。研究者というと少し暗くて、硬い方々かと思っていましたが、非常に情熱的で、壮大なビジョンに圧倒されたのを覚えています。この活動は、10年、20年という長い時間軸で考えていきたいと思っています。「ぐんまテックプラングランプリ」の本番はもちろん、この群馬の地に、様々な技術が実装されて、生活が変わっていくことを、中学生や高校生などの次世代が見て育つことも大事なエコシステムではないかと思います。知事も仰ってましたが、そのような仕組みも合わせて作っていく必要があると思っています。

【井上浄】みなさま、様々な具体的な事例紹介や意見をありがとうございます。県が推進するDXや、「ぐんぎんビジネスサポート大賞」など連携できる取り組みが明確になってきました。また、横山様の仰るとおり、次世代育成についても重要と思っています。グランプリを見に来るだけではなく、県内の中高生が自分のアイデアを実際に試せたり、専門家によるアドバイスが得られたりという仕組みも作っていきたいですね。重要なトピックスだと思いますので、最後にすこし次世代育成についての意見を皆様に伺いたいと思います。宇留賀様は、どのようにお考えでしょうか。

【宇留賀】まさに今、群馬県で一番力を入れている政策が教育改革です。小中高の一人一台 PCも全国に先駆けて実施しましたし、さらに2021年度からは、県内小中高の先生の役割をガラッと変えます。教科を教えるのではなく、生徒がPCを使いながら自分で学ぶのを支えるようになります。そうすると、生徒によっては周囲の生徒より早く終る科目などが出てきます。そこで、時間に余裕が出てくるはずなので、研究や探求ができるようになる。なので、「面白そう!やってみたい!」を生み出す刺激として、ぜひグランプリは見に来てほしいですね。

【井上聰】先程も触れた「ぐんぎんビジネスサポート大賞」や、当行やしののめ信金さんがフィナンシャルサポーターとして運営に関わっている「群馬イノベーションアワード」では、学生部門もあります。プランを事業化するというよりは、「何かを自分で考えて、アイデアを生み出す」という経験を大事にしてほしいと思って実施しています。たとえば、昨年12月の群馬イノベーションアワードでも、産業廃棄物処理や新型の感染症のような社会課題をテーマにした内容が出てきました。しかし、やはり中高生なのでアイデアを実現させることや、継続して仮説の検証を進めるような支援が難しい。ですが、斬新な発想でアイデアをだすことが重要だと思っていますので、テックプランターに出てきた研究者とそのあたりの連携ができると良いなと思いますね。

【横山】まさに、群馬イノベーションアワードなど既存の仕組みとは、産業創出だけではなく、次世代育成でも連携したいところですね。そうすることで、単なる一過性の1日だけあるコンテストだけではなく、創業したり、次世代育成をしたりして、地域産業を興していくというような包括的な取り組みになっていくと思います。それこそが、群馬ならではのエコシステムと言えるのではないでしょうか。

 

【井上浄】本当にみなさま貴重な意見、視点の共有をありがとうございます!あっという間に時間がきてしまいました。最後になりますが、産官学金で10年かけてここに土壌をつくっていくということは、本当に覚悟がないとできないことです。各機関がリスクをとってコンソーシアムを設立できたことは、本当に素晴らしいことだと思っています。

そして、今後は一緒に群馬の未来を作っていく、パートナー企業の募集を開始します。ぜひ地元企業の皆様と、新しく出てきた知識やアントレプレナーとが、どんどん新結合が起こるような場所にしていきたいですね。県内企業の皆様、研究者の皆様、ぜひこのコンソーシアムの活動に様々な形で参加いただき、群馬を共に盛り上げていきましょう。ご連絡お待ちしております!本日は誠にありがとうございました!

 

 

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ぐんま次世代産業創出・育成コンソーシアム
株式会社リバネス

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E-Mail:[email protected]
担当:石澤・伊地知