心臓から出る利尿ホルモンがガンの転移を予防!

心臓から出る利尿ホルモンがガンの転移を予防!

「たくさん水を飲んだら、トイレに行きたくなっちゃった」。
こんなとき体では「利尿ホルモン」が分泌されます。
これは、体液量が増えて心臓への負担が大きくなると分泌され、血管を拡張させたり、尿として水分を出して血圧を下げることで、心臓への負担を軽くしています。
今回、利尿ホルモンの新しい働きの仕組みが国立循環器病研究センター研究所と大阪大学の共同研究によってつきとめられました。

心臓から出る心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は、利尿ホルモンの一つで、おしっこを増やす働きと同時に、なんとがんの転移を抑制する働きもあることが知られています。
今回、ANPがどのようにがん転移を予防しているか明らかにするために研究が行われました。

まずヒトの肺がん細胞ないしマウス悪性黒色腫(がんの一種)をそれぞれ移植したマウスにANPを与えたところ、肺への転移が少なくなることが確認できました。
次にANPは血管を拡張させる働きがあることから、血管の細胞に着目し、ANPを認識する受容体を人為的に壊したマウスを使って同じ実験を行いました。

結果、そのマウスでは肺転移が多く、かつ通常では起こらない心臓へのがん転移が起こり、ANPは血管に働きかけてがん転移を予防していたことが分かりました。
詳しいメカニズムは研究中ですが、ANPは血管を保護する役割があり、がんの細胞が血管壁を乗り越えて増殖するのを阻止しているのではないかと考えられています。

実際、肺がん手術の後にANPを使用した患者さんのガン再発率が、使用しなかった患者さんより少なく良好な結果となりました。
また、乳がんや大腸がんといった他の種類のがんに対しても、効果があることが動物実験で確認されています。

実はANPを世界で初めて単離し、配列をつきとめたのは寒川賢治さん、松尾壽之さんの2人の日本人。
日本が世界をリードしている分野です。