グリーンサブウェイプロジェクト ~こだわり野菜への挑戦~
日本サブウェイ株式会社 代表取締役社長 伊藤 彰さん
食の安心・安全の問題は外食産業にも大きな問題の1つだ。消費期限切れや表示偽装の問題が騒がれたことも、記憶に新しい。今、その問題に真っ向から取り組むのが、「サブウェイ」だ。科学的知見を元に安心・安全な食の提供を目指す日本サブウェイ株式会社の伊藤彰社長に、その想いを聞いた。
「野菜のサブウェイ」のこだわりトマト
私たちサブウェイは、世界で33,050店舗を展開しており、世界でナンバー1の店舗数を誇る外食チェーン店です。その中で、日本のサブウェイでは「わたしたちは環境に配慮し、人々のからだとこころの「健康」に貢献する新しいファーストフード文化を創造していきます。」という理念を掲げ、「野菜のサブウェイ」というキャッチフレーズをもとに、2008年1月より健康で安心・安全なこだわり野菜をみなさんの手元に届けるしくみづくりを始めました。
これまで、サンドイッチにはさむ野菜は、カット工場を通していましたが、これからはサブウェイ仕様・産地指定の野菜生産を開始し、農法、品質、コスト改善にこだわった野菜を提供していこうと考えています。
最も使用量の多いトマトについては、大学発の技術を応用した農法でサブウェイ専用トマトを開発しています。この農法では、化学合成農薬の代わりにBacillus属の菌を使用します。この菌を用いることで、トマトの病原菌を寄せつけず、農薬を使わずに育てられます。さらに、有機堆肥で育てるため、硝酸態窒素をほとんど含みません。糖度が高く、えぐみも少ないことから、おいしいうえに安心・安全な、非常に魅力的なトマトです。現在はまだ試験的な導入にとどまっていますが、青森県をはじめとする産地の協力のもと、サブウェイで使うトマトを、順次この農法で育てたトマトに変えていきたいと思っています。
そのトマトを栽培しているのは、青森県の蓬田村でトマトづくりを30数年間続けてきた方です。私たちが直接農家さんとつながることで、生産者の顔が見える野菜を手に入れることができると同時に、一括購入契約を進め、規格外のトマトを利活用した新商品の開発も行い、食物ロスの軽減に貢献したいと考えます。
世界初の店産店消モデル
植物工場の研究をされている大学研究者との出会いをきっかけとして、植物工場にも注目し始めました。そして、2010年7月6日、
植物工場を併設した店舗「サブウェイ野菜ラボ丸ビル店」を丸ノ内ビルディングの地下1階にオープンしました。お店の中で生産した無農
薬の野菜をその場でサンドイッチにはさんで提供する「店産店消」モデルは、世界33,050店舗を有するサブウェイチェーンの中でも初
の取り組みです。生産地からカット工場、そして店舗への人件費や流通経路を省くことが可能になるだけでなく、これまで原料からの歩留まり
50%程度であったレタスの利用が、そのまま使用することで90%程度にまで効率化します。また、お客様からカットレタスに比べて食べやすく
なったという声を聞くようになりました。このモデルは、植物が生育する様子を店舗で直接見ることができるため、未来の子どもたちの食育活
動としても非常に大切な取り組みだと考えています。今後も数店舗、植物工場併設型店舗を出す計画を進めていきます。
野菜×サイエンス~野菜エンス~
微生物を活用した農法や植物工場生産によって無農薬野菜を提供する道筋が見えるようになり、生産者と消費者をつなぐ新しいモデルができ始めました。次は、ピーマンやオニオンについてもこだわりを持った安心・安全な野菜生産のかたちを模索していこうと考えています。野菜や農業に秘められたサイエンスに注目することで、安心・安全な食が見えてきます。科学的根拠に基づいた農業は、生産者から消費者までの安心につながるのです。語呂合わせで「野菜エンス」と言っていますが、私たちは、野菜の性質や栄養・機能を科学的に捉え、科学的根拠に基づ
いたこだわりの農法、それを担う生産者の顔を直接伝えていきたいと思います。これからは、農業や植物に関わる科学は、社会に大きく貢献していくと考えています。そのためにも、次代の科学を担う読者のみなさんの研究には、大きな期待を寄せています。
(﹃植物工場物語﹄に掲載した記事を改変)