日本の大学に求められる質保証と、理系人材育成のトレンドについて

日本の大学に求められる質保証と、理系人材育成のトレンドについて

大学の質保証とは何か


最近、大学関係者や文部科学省関係者の間で頻繁に使われる言葉がある。それが「大学の質保証」だ。質保証という言葉は日本というよりも、米国や欧州、国際機関で使われ始め、日本でもこの2-3年頻繁に用いられるようになった。最近では、中教審の答申でも用いられており、高等教育の政策的な課題として扱われている。

日本では大学全入時代と言われて久しいが、それにともなって徐々に大学の質の保証について語らるようになってきているようだ。

ここでは、日本で言う質保証は以下の2つが大きいとされている。

  • 行政改革的なプレッシャーで、公費が投じられた機関、公的な存在としての説明責任としての質保証
  • もうひとつは産業界からで、彼らが雇用する卒業生の”質”に責任を持ってほしいというプレッシャー

一方で、米英はどうかというと

米国や英国では、質保証は消費者保護という意味が強い。高額な授業料を支払う学生(消費者)に対して、大学が提供する教育サービスが確かなものであり、さらには大学が授与する学位が信用できるものであることを学生に対して保証することが求められている。大学も学生も多様化し、ピンキリの状況下、学生という消費者に対して教育サービスとそこで得られる学位の信頼性を明確に示さねばならなくなったということだろう。

先日こんなPostを投じた。

アメリカでは文系離れが進んでいる | リサーチア 研究応援Webマガジン


アメリカにおいては、文系離れが進んでおり、その理由は大学に就職に役立つ技能が求められているという事のようだ。大学入学の目的として、就職に役立つ技能が求められているとすれば、質の保証は自分の未来に直結する。

大学入学は大きな投資

アメリカの私立名門大学の授業料が膨大なのは有名な話だが、日本人にとっての大学の授業料も決して安くはない。私立の理系であれば年間100万円を超えるのは普通であると思うし、文字通り大きな投資である。

これに対して投資者(親、もしくは奨学金という名の借金を背負う学生そのもの)が質の保証を求めるのは自然だろう。4年間という時間と投資金額を考えたら、そこで得られるものは相当に重要である。

大学の質保証と同時に、学生の意識改革も必須事項

日本の大学生は本当に勉強をしないと言われています。

質の保証と共に、大学卒業の厳格化も議論されています。

ついに日本の大学も卒業しにくいという方向へ | リサーチア 研究応援Webマガジン


大学が変わっていくにつれて、学生側も変わる必要がある。

いくら、教育側が変わっても、勉強しないのでは成長に繋がりませんからね。

理系学生の質保証について

これについてもきっと考えていく必要があるのでしょう。

理系学生、特に博士号取得者については就職率が低くなりがちであるということは知られていますが、ここについても何らかの施策が行われていく必要があります。これについては先日投じたように、企業への中長期インターンシップで経済界とのズレを補正していくという事が考えられています。

【レポート】産学協働イノベーション人材育成協議会が発足 | リサーチア 研究応援Webマガジン


こちらについては、大学の質というよりは、ダイナミックに変わっていく企業環境をリアルタイムにインターンシップという形で経験することで、より良いマッチングを目指すというアプローチが取られます。

学部生については、大学側の質保証によって成長してもらい、修士・博士課程についてはインターンシップによって活躍の場を模索する事ができるようになっていく。

研究時間を効率化せよ

こうなってくると、最終的には「研究時間」が減る訳ですから、研究室側では研究のマネジメントを効率化する必要が出てきます。

今までやっていた事を、より効率化させ、時間をひねり出す。

産学協働イノベーション人材育成協議会においては、そのあたりまで突っ込んで頂けそうでしたので、今後の展開に期待しています。