秀逸な書き方、参考になる→「トンコツラーメン論文のイントロ」
さて、ここ数回にわたって、科学論文の書き方IMRADという枠組み、イントロ、マテメソ、結果、考察と図解で紹介してきました。今回は面白い作例を見つけたので紹介します!
論文というと英語ばかりですが、
安心してください日本語です!w
題材はなんとトンコツラーメン。作者は不明です。
ネットに潜む才能は本当にヤヴァイですね。どうしてこんなの書こうと思ったんでしょうか。
まずは見てください
↓↓
注意書きは筆者による。出典:トンコツラーメン論文のイントロ書いてみた
ご覧のようにイントロに必要なすべての要素がきれいに入っている。
感動的じゃないですか?
社会的な背景、重要な技術動向
トンコツラーメンは多くの日本人に親しまれ、日本国内だけで毎年75億食が消費されている(厚生労働省2010年統計)。すでに過去の研究によって、日本では種々のトンコツラーメンが作られている(Reviewed by Ohkuma et al. 1999)。従来、最も至高とされるつけあわせは高菜とされ、よく高菜が入れられている(Reviewed by Ohkuma et al. 1999)。ただし、そこにホウレンソウを入れた人はいない(Reviewed by Ohkuma et al. 1999)。
特に「ホウレンソウを入れた人はいない」など、断言!
課題をハッキリ指摘している点が素晴らしい。
関連研究、特に自分らの成果
早稲田大学・超先進理工学部・ラーメン学科・トンコツラーメン学研究室(以下 当研究室)では、トンコツラーメンに合う至高の葉野菜の解明に向けて、市販の主要な葉野菜を研究材料に探索が行われてきた。高菜に加え、すでに当研究室では、チンゲン菜(加藤 卒業論文 2008・修士論文2010)・キャベツ(佐藤 卒業論文2009)・タンポポ(内藤 卒業論文2010)・トリカブト(武藤 未公開)の研究があり、詳細な検討が行われている。
早稲田の超先進理工学部という進みすぎた学問の名前がついていて洒落が効いている。ここでは関連研究を挙げているが、特に自分のラボの成果を中心にあげ、これまでの検討の経緯を説明している。やたら卒業論文が多くて、若干「この研究室大丈夫か?」と思ってしまった。
モチベーション
続くパラグラフではモチベーションを述べている。
ホウレンソウは、高菜および他の葉野菜と比べ、鉄分やマグネシウムなどの栄養素に優れる(Noyori et al. 2002)。また、流通量は2012年に国内で5億トンに及び、葉野菜の中で上位10位に入り、手に入れやすい(農林水産省2013年統計)。ホウレンソウは有用な葉野菜であると言える。もし、トンコツラーメンにホウレンソウが至高の組み合わせであれば、新たなブレークスルーになると考えられる。そこで私はホウレンソウをいれた。
このようにホウレンソウの優位性を説明し、なぜホウレンソウでやりたいのか明示している。今回の論文のモチベーションがわかる。普通の学術論文よりも若干熱っぽい表現になっている気もする。
この論文で検証する仮説、扱う手法
イントロの最後に必要な、「この論文では何をどうやって検証するよ?」という内容が続く。
当研究室での先行研究(加藤 2008, 佐藤2009, 加藤2010, 内藤2010, 武藤 未公開)にならい、トンコツラーメンとの組み合わせ作用を定量評価するため、GC/MSならびにNMRによる成分分析を行った。従来の方法に加えて、ホウレンソウの材料特性にあわせた評価が必要であると考えられたため、味噌ラーメン学分野で急速に発展を遂げている海原-山岡の方法(Kaibara and Yamaoka 2013)を改良し、トンコツラーメン学研究に適用できる新たな官能評価法を開発した。本論文では、これについても述べる。
ハイ、きた!きました〜〜〜GC/MSとNMRですよ!
定量評価手法がここで明らかにされました。
さらに!
海原ー山岡という「美味しんぼ」的な官能評価法も開発したみたいです。
これは興味をそそられます。
ここまで読めば、この論文が
- ラーメンの評価法を探している
- ホウレンソウが合うのか知りたい
といったモチベーションの人が読むべき、ということがハッキリと伝わるでしょう。
さて参考文献にはNature review、Vegitable Cell, Oishinboなどの著名なジャーナルが引用されています。
もっと他に高品質な論文を探したくなったら、Web of Ramenで検索してみてはいかがでしょうか!
それではよい論文執筆タイムを!
チャオ!