教科と学年の枠を超え、生徒と教員で課題を探究する  大久保 靖

教科と学年の枠を超え、生徒と教員で課題を探究する  大久保 靖

「人間らしく生きる」 校長室へ続く廊下の大きな額縁の中に東京電機大学中学校・高等学校の教育理念が書かれている。同校は技術者を養成する学校として1939年に設立された。技術者として一人前になるということは、人間として一人前になること。技術のことだけではなく、文化、歴史、芸術など、文化的な教養にも目を向ける広い視野を持つ人材を育てる、そんな思いが理念にこめられていた。東京電機大学中学校・高等学校は変化し続ける未来を生き残る人材を育成するべく、改革の第一歩を踏み出している。

2030年に求められる力を考える、それがスタート地点

同校には、中学3年生で総合学習の時間を使って卒業研究という特徴的な教育を行っていた。生徒は自分で選んだテーマに沿ってフィールドワークや実験・観察を通して研究を進め、レポートをまとめて発表する。現在のアクティブラーニングや課題研究に通じる素晴らしい取り組みではあるのだが、行き詰まり始めていた。卒業研究は個人でやることを基本としていたので、積極的に研究に取り組める生徒と、テーマ設定が上手くできなかったり、情報が十分に集められなかったりと、生徒の間の個人差が大きくなり始めていたのだ。「その他にも、総合学習の時間では、教科の枠を超えた知識や技能を学ぶ場として、職場訪問、ボランティア活動などさまざまな取り組みをしてきました。いろいろなことを実施してきたがゆえに、そもそも何のためにやっているか、という目的が形骸化していたのを感じたのです。」と大久保先生。生徒の人間としての成長に重要な総合学習の見直しをするため、若い世代の先生が中心となるワーキンググループが2014年に立ち上がった。大久保先生自身が主査を務めるこのグループは、「どんな生徒を育てるか?」という原点に立ち戻るところからディスカッションを始めた。

「我々の生徒が社会で活躍する時代、2030年はどんな時代なのか。どんな生徒を育てるか?という問いへの答えを考えるため、まずは未来予測を始めました。おそらく、人口は減り続け、高齢化はさらに深刻になっているでしょう。グローバル化も進み経済格差はさらに拡がる・・・と、なかなか厳しい状況になっていると思います。そんな状況でも力強く生きていってほしい。それにはどんな資質や能力が必要なのか、それがディスカッションの中心となりました」。真剣に議論を重ねた結果、出てきた答えが“5つの力”だった。

1)幅広い知識と深い自己理解に基づく視野の広さ
2)更なる成長めざし粘り強く努力する向上心
3)リスクを恐れず果敢にチャレンジしようとする冒険心
4)他者への理解を深め相互に承認し合いプラスアルファの力を引き出す共感
5)自分が得意とする分野を見定めそれを修得し深化させる専門性

これら“5つの力”を育成するための総合学習とは何か?更にディスカッションが重ねられた。そして来年度、2年にわたる議論の末、辿り着いた新しい総合学習の取り組みが始動する。

答えのない問いを探究し、たくさん失敗する場

新しい総合学習の取り組みは「TDU 4D-Lab」と名付けられた。中2から高2までの4学年が一緒になって興味があるテーマについて継続的に探求する「ラボ(Lab)」に所属する新しい取り組みだ。大学のラボ(研究室)では、テーマに沿って大学生から院生までことなる学年が取り組む。「TDU 4D-Lab」では大学のスタイルを参考にしている。初年度のラボは、理工学や情報、生命科学系のテーマを始め、人文、社会、国際学のテーマまで合計39個。20名前後の生徒で構成される各ラボを1名の教員が担当する。いままでの授業の取り組みでは存在しなかった学年横断型のこの取り組みでは、先輩が後輩を指導するリーダーシップ、異なる世代からなるメンバーで協働するグループワーク、答えのない問いへのチャレンジ、そして継続的に一つのテーマについて探求する研究思考など、いままでの総合学習の取り組みでは得られなかった経験を提供することを狙いとしている。

 

ファシリテーターに徹することで生徒を伸ばす

総合学習の目的の再定義、“5つの力”の選定から、ラボのアイデア創発など「TDU 4D-Lab」が形になるまで約2年。教員チームでゼロから作り上げたこの新しい取り組みは、学校にとっても、そして教員自身にとってもまったく新しい経験になる。「各ラボでは教員が全てを教えられなくても良いのです。生徒と一緒に挑戦していく過程で失敗したとしても、生徒が自分で考えられる環境をつくることが大切です。だから、先生はファシリテーターに徹してください、と言っています。そうやって生徒の自立を促すこと、それこそがこれから教師に求められている役割ですから。」教科書から教えるのではない。自分も答えを知らない問いを生徒と一緒に探求する過程で、学びや気づきを提供するにはどんなやり方があるのか。知識や経験が異なるチームをまとめるにはどうすればいいのか。2016年春、東京電機大学高等学校の未来への挑戦がスタートする。

【学校情報】
東京電機大学中学校・高等学校
〒184-8555 東京都小金井市梶野町4-8-1
Tel: 0422-73-6441  Fax:0422-37-6822
ウェブサイト: http://www.dendai.ed.jp/index.html

 

 

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リバネス 国際開発事業部 [email protected]  担当:前田

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グローバルリーダー育成プログラムの企画方法、課題研究の組み立て方、海外研修コーディネート、
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