【開催レポ】12月7日超異分野学会フィリピン大会を初開催! – Island Issues and its Potential –
2019年12月7日にフィリピンのPhilippine Trade Training Centerにて、第1回超異分野学会フィリピン大会を開催いたしました。大会テーマは”Island Issues and its Potential”。日本とフィリピンの大企業、スタートアップや大学の研究者、インキュベーターやエンジニアなど、様々なバックグラウンドの参加者約60名が一同に会し、フィリピンの課題を解決しうる新たな研究やテクノロジーについて活発に議論する場となりました。
2012年以来、リバネスは、アカデミア、大企業、ベンチャー、町工場、中学校や高校などの教育機関、地方自治体が集まり、新たな知識を生み出す超異分野学会を開催しています。本年2019年は海外展開元年となり、1月にマレーシア、2月にシンガポール、11月にインド、そして今月12月のフィリピンをもって4カ国に展開することができました。現地研究者からは、「HIC」という略称で親しまれています。
基調講演には、無電化地帯に塩水ランプを届けるベンチャー企業SALtファウンダーCEOのMs. Aisa Mijeno氏を迎えました。教育者かつ研究者でもある彼女は、学際的なコミュニティをつくり島国フィリピンの課題に共に取り組むことの意義を力強く語りました。リバネスは既に2018年3月の超異分野学会・東京大会にAisa氏を招待しており、彼女はリバネスがフィリピンでプロジェクトを立ち上げるための架け橋となっています。
午前中の超異分野ピッチセッションでは、フィリピン、日本双方から計15人のスピーカーが集まり、アカデミアの研究成果やスタートアップのプロジェクトアイデアを共有しました。
午後には、”Island Issues and its Potential”という大会テーマのもと、農業、教育、インフラストラクチャーという3つの課題に着目してパネルディスカッションを行いました。
また、教育パネルセッションの後には、ミンダナオに拠点を置くエデュテックベンチャーWela Online Corp.との業務資本提携を発表しました。 プレスリリースはこちら(和文 英文)。
最優秀ポスター発表賞に見事輝いたのは、フレキシブル電極を開発するフィリピンのNanoLabs LRC Co., Ltd. そして、折り紙技術を用いた三次元構造を開発する日本のOUTSENSE, Inc.の2社でした。おめでとうございます!授賞の基準は、研究のアイデアをわかりやすくコミュニケーションできたかと、その取組みに協力したいと思ったかという点です。会場投票結果に基づき、フィリピンと日本からの2人の起業家が同票数を獲得し、喜びと共に研究開発をさらに加速させるという使命を分かち合いました。
[概要]
超異分野学会フィリピン大会
■テーマ Island Issues and its Potential
■日時 2019年12月7日(土) 10:00am – 5:30pm
■会場 Philippine Trade Training Center, Pasay City
< 農業セッション > Local research to enhance the value of tropical agriculture resources http://hiconf.lne.st/2019/12/hic_ph2019_agri_session |
農業地域と都市部の所得格差の課題に取り組むTeam UBE techのRaffy氏は、規格外の紫ヤムイモを活用するための粉末化技術を開発。コールドチェーンの整備されていないフィリピン都市部では農産物輸送に3日かかり、UPROOT Urban FarmsのRobi Del Rosario氏はアクアポニックスを開発しBtoBの野菜販売事業と主婦の雇用促進を行っている。そしてフィリピン大学ロスバニョス校Technology Transfer and Business Development Office DirectorのGlenn Navarra Baticados氏からは、重要輸出品目であるバナナの病気を防ぐ薬剤の開発の事例をもとに、大学技術の事業化支援と、農家導入の取組みについて共有した。セッションを通し、そもそも農業エリアは無電化地域であるなど新たなテクノロジーに触れる機会が乏しく、食品ロスなど社会課題に対する意識も低いといった課題が挙げられ、アカデミアやスタートアップから生まれる新たな知識を橋渡しし、農家の教育や人材育成に取り組んでいこうという結論が得られた。
< 教育セッション> Installing technologies into schools to improve quality of Education https://lne.st/2019/11/23/hicph_edsession/ |
学校教育用のE-learningキットと学習コンテンツを開発・提供するFrontLearners, Inc.のElaine De Velez氏は、「質の良い教育を、より多くの子どもたちに」という信念のもと、教師が本来注力すべき生徒始動やディスカッションにより多くの時間とリソースを割くための事業を展開している。日本から参加したLife is Tech!の石川氏は、創業時に行われた調査でたった8%の生徒しか「自分にはクリエイティビティがあると思う」と回答できない日本の教育界に危機感を覚え、子どもたちが手を動かして楽しみながら学べる場、教育とエンターテイメントを融合させた教育プログラムを創り続けてきた。Wela Online Corp.のJohn氏は、保護者が生徒の登校と安全を確認するためのオンラインチェックインシステム、膨大な書類作業に追われる教師の負担を軽減するためのオンライン採点システムを導入している。実際、現在フィリピン政府はICT教育を5,000以上の学校に導入すると決定しており、さらには農業や水産業、アートなど専門的な高等教育の中でICTを用いて教育することを重要付けており、追い風だ。セッションの最後にはモデレーターのAisa氏よりテクノプレナー(起業家)教育についても話題がふられ、Elaine氏は、全ての産業が教育に参画し、科学技術を土台に次世代の産業をつくっていくべきだと呼びかけた。
<インフラセッション> How emerging technologies bring innovation to tackle island issues? https://hiconf.lne.st/2019/12/hic_ph2019_infra_session/ |
日本のTECH PLANTERの初代優勝者清水氏が立ち上げたChallenergy社のフィリピン現地支社Challnergy Philippines, Inc. のMaria氏は、フィリピンの非電化率が東南アジアで2番目に高いことにふれ、教育・農業・水産業の振興のためにも、台風のエネルギーを活用し得るマグナス型風力発電機の現地展開について紹介した。政府はドローンの活用先として防災と農業分野に注力しており、DWARM Technologies(TECH PLANTER in the Philippines2019ファイナリスト)のSamantha氏は、多数のドローンを同時にコントロールする技術を開発し、農業や災害時の網羅的かつ迅速なモニタリングを行うことを目指している。日本から参加した上場ドローンベンチャーACSLの塚田氏も、強風や雨に強いドローンを開発しており、既に先の日本の台風災害直後に断絶された地域へドローンを派遣し、無人輸送や機器点検を可能にした。ディスカッションでは、先端技術を導入する際に地方政府から理解を得ることの難しさについて一同うなづきつつも、小規模でも導入実績を示していくことの重要性について話された。また、日本には細やかでコンパクトな技術が多数存在することから、それらがフィリピン各諸島地域のエネルギーやインフラの課題に十分に活用し得るという大きな期待が示された。
今後ともリバネスでは、「科学技術の発展と地球貢献の実現」という理念の実現に向け、世界各国の大学研究者との連携を強めて参ります。次はいよいよ、2020年3月の東京本大会です。皆様のご参加をお待ちしております。
< 今後のイベント >
第9回超異分野学会 本大会
■日程:2020年3月6日(金)、7日(土)9:00〜18:00(懇親会 18:00~20:00)
■ウェブサイト : https://hic.lne.st/
■大会テーマ:知識製造業の新時代
■場所:大田区産業プラザPiO
***3月6日(金)World Communicationセッションでは、海外9カ国よりディープテック・ベンチャー企業が集結します。ほかにもインキュベーター、政府機関、大学研究者が各国から一同に会す、大チャンスです。新規事業の探索に、ぜひこの機会をご活用ください。***
<本件に関する問合せ>
株式会社リバネス(秋永)
03-5227-4198 [email protected]