「人に伝える能力」を磨く

「人に伝える能力」を磨く

株式会社リバネス

修士1年から卒業まで、リバネスのインターンシップに参加していた上嶋右子さん。現在は、高校の教員として活躍する。教師になった今、リバネスでインターンシップに参加したことが大きな財産になっていると上嶋さんは語る。

10を知っているから、1を伝えることができる

現在、高校教師として教壇に立つ上嶋さんも、大学進学当初から教師を目指していたわけではない。大学院に進学したのは、学部の研究だけでは物足りないという漠然とした考えからだ。しかし、教師となった今、大学院に進学した経験が大いに役立っているという。
「1を伝えるにしても、1しか知らなければ、それを伝えきることはできません。10を知っているからこそ、大事な1の部分を伝えられるのだと思います」。豊富な知識や研究経験のある大学院卒の人材が高等教育の場に積極的に出て行く必要性が叫ばれている。高い専門性と最新の知識に裏打ちされた魅力ある授業を展開するには、最先端の科学に触れた経験は大きな武器になるはずだ。

伝える能力の大切さを知る

もちろん、最先端の知識や研究経験をただ持っているだけでは伝えることはできない。この時に鍵を握るのが、‘伝える能力’だ。上嶋さん自身、伝える能力の重要性を実感した経験があるという。「研究室を移って間もない頃は、研究室の発表を聞いていてもバックグラウンドが異なっているので、理解するのに苦労しました」。どのような背景や目的があり、どうして面白いのか。いざとなったら、自分の研究を子どもにでも伝えられる力が必要ではないか―。そう考えているうちにリバネスに出会った。

‘自分が何を伝えたいか’ではなく、‘相手が何を求めているか’

リバネスのインターンシップの最大の特徴は、研究者に不足しがちなコミュニケーションスキルを高める育成システムにある。その中核となるのは、小・中・高校生を対象とした「実験教室」の企画・運営を行うこと。知識のない子供たちに最先端科学を伝えるには、研究室内のコミュニケーションとは異なる視点が求められる。実験教室を株式会社のサービスとして提供しているため、その内容に甘えはない。1ヶ月の間に、何度もプレゼンの練習をする。厳しい環境に辛さも当然あったという。しかし、それゆえの達成感も学びもあった。
実験教室から学んだことの中で、今でも忘れることのできないことがある。それは、「人に何かを伝える際には、自分が‘何を伝えたいか’ではなくて、相手が‘何を求めているか’を知ろうとしなければ、相手には何も伝わらない」という言葉。この言葉を聞いた時、目からウロコが落ちたという。

「伝える」ことは面白い

こうした経験を経て、教師になりたいとい考えるようになった上嶋さんは、日々、生徒たちにサイエンスの面白さを伝えている。
「やりがいはあります。『わかった』とか、『面白かった』って、一人でもいってくれると意味のある仕事をしているなと感じます」。社会で理科離れが叫ばれている中、授業の内容だけでなく、日々、研究の世界で生まれている先端科学をも伝え、生徒たちに科学リテラシーを育てていきたい。「人に伝えること」の難しさ、面白さを知った上嶋さんは、教師という職業に大きな魅力を感じている。
自分の想いを、いかに人に伝えるか。リバネスのインターンシップは、伝える能力を伸ばしたい人にとって、格好の訓練の場を与えてくれるだろう。(文・佐川 哲也)