研究者の海外武者修行、応援します!
株式会社ヴィレッジ 代表取締役 増子 雅洋さん
平日に建材商社にて働きながら、週末に携帯電話販売を行う2足のわらじを履いた生活を3年間行う。1997年、株式会社ヴィレッジを設立。同社代表取締役に就任。相模原市を中心にモバイルショップを経営する傍ら、飲食業や不動産業など、地域コミュニティに根差した様々な事業を展開。2010年、アメリカ法人「VillageUSAInc.」を立ち上げ、9月にはコスタメサにmobileショップをオーフプン予定。
株式会社リバネス 代表取締役 CEO 丸 幸弘
2006年東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻博士課程修了。博士(農学)。修士課程在学時、2002年に日本初のバイオ教育ベンチャー、有限会社リバネスを理工系大学院生のみで設立。2003年、株式会社リバネスの代表取締役に就任。科学雑誌『someone』の発行、年間100回の出張実験教室など理系に特化した教育やメメディア、人材育成などの事業を展開。関西、沖縄に事業所を構え、アメリカ、シンガポールに子会社を設立、中国にも進出予定。
株式会社ヴィレッジは、神奈川県相模原市を中心に、携帯電話販売、飲食業、不動産業など地域住民の生活の基盤となる事業を展開する企業だ。研究者とは関わりが薄く見える企業だが、9月にリバネス研究費ヴィレッジ賞を設置した。代表取締役を務める増子雅洋さんが、リバネス代表取締役CEO丸幸弘との話の中で、その真意を語る。
機を見るに敏
丸:携帯電話の販売に飲食、不動産など、様々な事業をされていますよね。まずは、起業の経緯について教えてもらえますか?
増子:若い頃は、建材商社で国内向けに耐火材や生コンなどを販売していました。当時は安月給で生活が苦しくて、27歳のときに、たまたまドコモショップに勤務する友人から勧められて携帯電話販売の
アルバイトを始めたんです。1台売れると10,000円くらいの利益で、月に10台くらい売っていました。おかげでだいぶ生活が楽になりましたね。さらに、家内の実家がCDショップを経営してい
たので、そこに場所を間借りして、平日は家内が、土日は私が店番をする生活を始めました。お休みはCDショップに合わせて元旦のみで、年間364日働いていました。
丸: 増子さんが27歳のときだから1995年頃ですね。ちょうど携帯電話が急速に普及していった時期でしたよね。
増子:そうです。携帯がどんどん売れ始めていて、たまたま折り込み広告を見ていたら「携帯電話の取次店募集」っていう広告を見つけたんですよ。「これはチャンスだ」と思って、サラリーマンをしながら路面店を開店したんです。それ
をきっかけに店舗が増えて10店舗くらいになったときに、卸し元の携帯会社から「信用の問題もあるから、会社化してほしい」って言われて、それで30歳のときに会社を設立したんです。携帯電話の販売は地域に密着したビジネスなので、どうせ会社を作るなら、地域の人が幸せに暮らせるようなコミュニティを作る会社にしたい。そんな想いを込めて「ヴィレッジ(村)」という名前にしたんです。
丸:飲食業はなぜ始めたんですか?
増子:地域のショッピングモールで携帯販売店の出展コンペがあったときに、そのモールにスイーツを出すお店の出店計画がなくて、「アイス屋を作ってくれたら、携帯の店舗も任せる」って言われたのがきっかけです。とにかく「チャンスだ」と思ったら、新しいことでも迷わず行動し続ける。それが結果的に今の事業内容に広がっていったんです。
偶然の会話の中で、研究者のニーズを知る
丸:今回、研究費をスタートさせることになりましたけど、きっかけは本当に偶然でしたよね。
増子:確かにそうですね。ちょうどうちの会社がアメリカ在住の日本人向けに新しい携帯電話サービスを導入した、という話を丸さんにしたのがきっかけでした。通常、アメリカで生活を始める際に携帯電話を持とうとすると、ソーシャルセキュリティナンバー( 社会保障番号)や、クレジットヒストリーと呼ばれる支払の信用度を表す情報や数百ドルの保証金が必要で、日本人にとってハードルが高
い。新しく導入した携帯電話サービス「KDDI Mobile」は、パスポートとクレジットカードさえあれば、保証金なしで渡米前に契約ができて、現地に行ってすぐに使用できる。
丸:それを聞いて僕は「これは研究者向けだ!」って思ったんですよ。研究者には、アメリカで研究生活を送る人も多いし、学位を取る人もいる。つまり海外に長期滞在する人が多い。日本にいる家族や友人との電話ならSkypeで代用できますけど、土地が広いアメリカでは、連絡手段がないことが死活問題につながることもある。郊外でガソリン切れになったらどうにもなりませんからね。
増子:それを聞いて、研究者に知ってもらうにはどうしたらいいかと尋ねたら、リバネス研究費のことを教えてくれたんですよね。研究費を設置することで、研究者に「KDDI Mobile」を知ってもらうことができて、さらにそれが海外で新しいチャレンジをしようという気持ちを持っている人を応援することにつながるなら、そんなにいいことはないと思いましたね。
丸:海外での研究経験は、研究者になるためにはもちろんですが、研究者以外のキャリアを選んだときにも活きてきます。でも、帰国後の就職の問題などもあって最近だと海外に行く研究者が減ってきているんです。だから僕も、若い研究者にもっと海外に出てほしいと思っていたんです。
増子:僕自身、チャンスだと思ったときに迷わず行動して、チャレンジを続けてきたことが、今の自分につながっています。この9月には、アメリカカルフォルニア州にあるコスタメサに「KDDIMobile」を扱う店舗を出店して、アメリカ法人「Village USAInc.」を始動させるチャレンジをします。だから若い人たちにも、もっとアクティブに、いろいろなことを経験してほしい。グローバル化が進む今の時代、若いうちに海外に行けば絶対に将来のプラスになるはず。だから、ぜひリバネス研究費ヴィレッジ賞に応募してください!(文 長谷川和宏)