アカデミックキャリアへの道
研究者は子供たちに人気!?
「あなたが一番なりたい職業は?」スポーツ選手、医師に次いで子どもたちから人気が高いのは「研究者」であることをご存じだろうか?ベネッセの教育研究開発センターが調査する子ども生活実態基本調査によると、小学生男子から高校生男子の間で、毎回「研究者・大学教員」はベスト10に選ばれている。「末は博士か大臣か」「博士はエリートがたどる道」といわれた時代はとっくに過ぎたにもかかわらず、研究者人気が高いことは驚きだ。一方、大人たちの間ではこんなニュースが話題になった。「博士課程入学時の平均競争倍率は0.9倍」。つまり、博士課程に定員割れが起こっている、ということだ。「就職難」や「不安定」といった印象から、博士課程への進学を敬遠する動きが出てきていること、「研究者・大学教員」の職が少なくなっていることが原因と見られる。実際、「研究者・大学教員」に占める37歳以下の割合は年々低下している。子どもたちの憧れの職業、「研究者」が今、ますます狭き門になっているのだ。
大学教員の今
大学研究者の一番の魅力といえば、学問の自由があることだ。「自分の好きなテーマで研究を続けたい」という想いから大学に残る人も多い
ことだろう。では実際、大学で研究者はどのような生活を送っているのだろうか。研究者の生活を知るには、何に時間を使っているのかを見ればよい。文部科学 省で行っている「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査報告書平成20年調査」には研究者の総職務時間と内訳が載っている。研究者の総職務時間 は3001時間。そのうち研究以外に費やす時間は教育が755時間で約25%、次いで学内事務が558時間で約20%、社会サービス活動(研究・教育・医 療従事)が458時間で約15%という順になった。研究者はその生涯時間の半分以上を研究以外の時間、教育者としての時間、研究室や学校を経営する経営者 としての時間、社会サービス活動に従事する時間として使っていることが分かる。1999年に開催された世界科学会議において採択された「ブダペスト宣言」 で、20世紀は「知識のための科学」から「社会のための科学」と説かれている。これから社会サービス活動や教育的視点がますます重要視されてくる時代にな る中で、教育者としての視点や社会と関わる姿勢が問われるだろう。
あなたは大学教員になれるか?
自然科学系の博士号取得者の約5割強は、大学、研究機関でアカデミアの道を歩む。しかし、どうやったら「研究者・大学教員」になれるのかについて、誰からも教わることはない。アカデミックキャリアの登竜門であるポスト・ドクターとなった後、どうキャリアアップを図っていくのか?研究室を運営するために必要な視点は?教育者としてどう学生を育てていけばよいのか?本特集では、アカデミックポストに就く研究者に取材し、誰も教えてくれなかった「研究者・大学教員」になるためのヒントをお伝えしていこうと思う。