日本の IT 企業8社に聞いた、10年後、 どんな未来を描いていますか?
日本ではミクシィ、ディー・エヌ・エー、グリーなどに代表される情報系企業が独自の拡大を続けてきた。新しいサービスで世界を狙っていく企業がいる一方で、コアな技術を持って勝負をする企業もある。それぞれの企業がどのような未来を描いているのか。若手の情報系起業家8名に、自分たちの描く10年後を聞いた。
永遠のβ版を追求する
鳥人間は、私(久川)と郷田の2人で興味のあることをやるための会社です。
携帯カメラや地図上で衛星軌道を確認できるiPhoneアプリ「ToriSat」を開発し、フロリダで実演などもしています。日本では100%バグのない製品を求めますが、アメリカでは致命的な欠陥がない段階でリリースし、その後に完成度を高め続ける
「永遠のβ版」という考え方が一般的です。「100%は作れない」ことを意識し、クライアントに理解してもらうことが必要です
代表取締役社長 久川真吾さん
プログラマ 郷田まり子さん
電子教科書のソーシャル化で世界の教育を変える
会社を設立のきっかけは「数式を入力できる技術」の開発。理系のコミュニケーションを助ける技術を開発したいと思ったのが始まりでした。今は電子書籍にコメントを書き込める「リンドック」という技術を開発しています。電子書籍をソーシャルウェブにすることで、「人に聞く」「人に教える」関係を世界に広げ、教育の仕組みを変えていきたいと思います。
代表取締役 町野明徳さん
世界中から鎌倉にwebクリエイターを集める
カヤックが本社を置く鎌倉から世界に向けて、時に有益で時に無駄なwebサービスを発信し続けようと考えています。webサービスならどこにいても世界中の人々にサービスを提供できます。「日本」や「漫画」が大好きな海外のwebクリエイターを鎌倉に集めることからスタートし、彼らといっしょに様々なサービスをつくっていきます。
代表取締役 柳澤大輔さん
沖縄から世界へ羽ばたく人材育成プラットフォームに
沖縄の若者に「世界を相手にできる」という意識を持ってほしくて、学生をシリコンバレーに派遣する研修を行っています。私たちには外部に頼らない沖縄の経済的自立と世界で活躍できる人材を生む仕組みをつくりたいという想いがあります。未来の沖縄はアジアとアメリカをつなぐ中継地であり、中国語や英語が飛び交う多国籍地域。そんな沖縄でグローバルな視点を持ったうちなー(沖縄の)起業家を生むプラットフォームを目指しています。
代表取締役社長 比屋根隆さん
儲かる会社よりも潰れない会社を
ウェブやモバイルに関するシステム・デザイン受託とサイト運営によるメディア事業を行っています。日本では急速な規模の拡大による失敗事例も多く、設立から「儲かる会社よりも潰れない会社」を標榜し、継続的な仕事やストックになるビジネスを優先的に選んでいます。シリコンバレーのように一攫千金を目指すのではなく、前向きな努力を積み重ねて結果を出す社員が評価される環境を作ることを第一に考えて経営を行っています。
代表取締役社長 水口翼さん
高画像品質の世界ブランドになりたい
画像処理研究で博士号を取得後に起業し、デジカメや携帯電話に搭載されるカメラの手ブレ補正ソフトなどをつくっています。私たちの技術力を投資家が理解し、長期的な視点で投資してくれたので事業の柱となる技術構築ができ、今があります。目指すのはドルビーデジタルのようにモルフォのロゴが製品に入っていることが高品質を保証すること。テクノロジーに裏付けされた確かなブランドと世界で認められる会社が目標です。
代表取締役社長 平賀督基さん
日本独自のベンチャー成長モデルを創りだす
クロスアビリティは、GPGPU含むHPC手法による科学技術計算高速化や、センサネットワークを促進するワイヤレスデータ取得アダプタ開発を行っています。4年目になってようやく、センサデータを統計処理し、科学技術計算させる複合的なソリューションを提案できるようになっています。
知的財産をクロスして新たなサービスを創造し、それらを活用したジョイントベンチャーを急成長させるモデルが日本再生のカギと考えています。
代表取締役 古賀良太さん
遺伝統計学をサイエンティストに浸透させたい
膨大な遺伝的データが得られるようになった今、「得られた結果が解釈可能で実用的であるか」を判断することが非常に重要です。遺伝学と統計学のエキスパートである我々は、判断を裏打ちする遺伝統計学を通じて世界の健康に貢献することを目指しています。統計学は科学のあらゆる分野の土台となる学問ですが、日本の大学には専門的に学ぶ学部や専攻がほとんど存在しません。「医薬やヘルスケアの分野で客観的な判断を下すならスタージェンを通じて」となることを目指しています。
遺伝統計解析事業部 上辻茂男さん