リバネス的 実践型インターンシップのススメ―社会人として、研究者としての自覚を促す―

リバネス的 実践型インターンシップのススメ―社会人として、研究者としての自覚を促す―

博士の学生歓迎。参加条件は半年以上。それがリバネスの長期実践型インターンシップだ。参加した人が一様に「濃い時間だった」と話すこのインターンシップでは、本格的な社会経験を積みながら、自分の研究へも、大きなフィードバックが得られる。社会人として、研究者としての自覚を育てるこのインターンシップを実際に経験し、社会で活躍しているOBOGに話を聞いてみよう。

 

本田 稔(ほんだみのる)

日本光電工業株式会社所属。技術者として、生体情報モニタの開発に携わっている。東京大学新領域創成科学研究科情報生命科学専攻修了。博士(科学)。脳科学の研究で博士号を取得。リバネス活動期間は2008 年~2009 年。あだ名は「みのるん」。

河合(野間)繁子(かわい/のま しげこ) 

東京工業大学生命理工学研究科 博士研究員。東京大学新領域創成研究科メディカルゲノム専攻修了。博士(生命科学)。酵母を使ったプリオンタンパク質の研究で博士号を取得。リバネス活動期間は2006 年~ 2008 年。あだ名は「のまちゃん」。

徹底的に自分を見つめなおすチャンス
河合 私がインターンシップを始めたのは博士課程で東京大学の柏の葉キャンパスに移った1年生のときです。もともと修士までは学芸大学にいたので教員にはならなかったけど教育には興味があって。リバネスは「理科」ではなく、「最先端の科学」を小学生にも伝えると聞いて、自
分の専門を教育にも活かせるならやってみたいな、と思ったんだ。
本田 僕も博士後期1年のときでした。博士課程には進んだものの、本当にこの進路でよかったのかなーという迷いがあって。研究室の外で会社を知る良い機会だったのと、自分は「人に知識を教える」ことが好きだと感じていたので、自分の専門を伝えるこの活動は合っているんじゃないかと思いました。

河合 行ってみて驚いたのは、みんなの新しいものをつくることに対する熱意の強さだね。私が参加した当初はまだあんまり会社っぽくないときで(笑)。日曜日に会議のために集まるんだけど、いろんなプロジェクトが並行して走っていて、狭い部屋の中でみんな真剣に議論していた姿が印象的。同世代なのに、研究室とはちょっと違うぞって感じ。

本田 僕はみんなが自分はこう思うって意見を臆せずに話していることに驚きました。しかもすごいスピードで意見が交換されていく。自分も「あなたはどう思うの?」っていっぱい聞かれたし。
河合 そうそう。でもそのおかげで私は自分の研究の意味を見出せたかも。企業の知財部門の人に最先端の研究について伝える研修をしたことがあって、そのとき、私は自分の研究がバイオイメージングを中心にしていたから、イメージングの話をしたんだけど、プレゼンをつくる過程で、「あなたはどうしてイメージングをするの?」ってずっとみんなに聞かれて。今まで私は自分の研究をやる意義なんて考えたことなかった。ラボに機械があったし、イメージングをするのは当たり前だって思ってたから相当考えた。そこで初めて「視る」ことが一番生命現象を理解できるからだって気づいて。博士課程の審査でもそのことを話したよ。
本田 超異分野交流会で博士課程の研究に関するお話をされましたよね。あれは印象的でしたよ。
河合 研究科で卒業時に賞をいただけたんだけど、そうやって自分の研究の意義をしっかり理解して話せたからだと思ってるんだ。

1つのことにのめり込む体質を自らつくる
本田 リバネスでは新しい企画をインターン生が走らせたりすることもあるし、たいていの企画のリーダーもインターン生に任せてもらえるということも驚きでした。でも責任が大きい分大変だった!のまちゃんが一番大変だったな~と思うプロジェクトはなんですか?
河合 さっき話した企業研修かな。イメージングなんて今までリバネスでやったことがなかったから、講義もプロトコルも全部ゼロからのスタート。機械もなくて他の企業さんからお借りしてこないといけなかった。お金のやり取りだったり秘密保持契約だったり、3社のコーディネートをかなり長い時間をかけてやったな。単純に企画の流れを考えるということ以上の経験をさせてもらいました。
本田 僕は初講師をやったプロジェクトかな。自分の準備不足を痛感しましたね。どれくらいかけて準備すればいいのかすらわかってなかった。僕の認識の甘さでいっぱい迷惑をかけました。
河合 研究と両立しようねと言ってたけど、正直大変だったよね。同じ実験教室は何1つなくて、いつも新しいものを考えていたから。私は結婚もしてたから研究室と家庭との両立はすごく大変だった。

本田 僕は他にも学会の運営などに集中したい時期があって、活動期間が2回に分かれてるんですよ。1年の春から半年と、ちょっと休んでからの1年生の後半からの半年ですね。
河合 長期インターンシップだから、基本的にはみんな半年から2年くらいいるけど、そうやって自分の都合に合わせてお休みする人もいるよね。

本田 でも、のめり込むことも大事だと思いますよ。ある期間、何かにのめり込めんでずっと考えられるようじゃないと、博士課程は乗り切れないと思います。何かにのめり込める体質を自らつくる場所でもあったような気がしますね。すべてが新しいチャレンジなのだから、時間が読めないこともある。研究も一緒ですよね。

河合 そうだよね。私はすごく大変だったけど、やってみて良かったなーって思ってるもんね。

考える過程を得たことが財産

河合 私はここに来て、自分の研究に対する見方が変わったし、自分の研究について、誰にでもわかりやすく、面白いと思ってもらえるように話そうって思えるようになったんだけど、みのるんは何か変化があった?

本田 以前より自分の考えを話せるようになりましたね。あれだけみんなに自分の考えを突っ込まれたらそうならざるを得ないですね。自分が何を考えているのかを振り返る機会が、リバネスにはたくさんありましたね。ラボの仲間とも自分からディスカッションの機会をたくさん設けるようになりました。このラボでどんなことをやっていけばいいか、インパクトのある研究成果をあげるにはどうすればいいか、学生たちで腹を割って話し合う環境を自らつくるようになりました。
河合 研究者としての自分の想いを持てたことも良かった。いろんな人と話す中で自分の研究を社会に還元しなきゃという気持ちになれたよ。本田 こうしてみると、何のプロジェクトで経験を積んだかということよりも、ゴールに向かってさまざまな人と議論する中で自分の考えを掘り下げたり、想いを整理したりする過程を学べたことが今にも活きていますよね。就職活動など、一時的なイベントのためにじゃなく、自分を見つめなおす機会として、参加してほしいですよね。
河合 リバネスにいると、広い社会の中にいることが実感できる。研究者にこそ、絶対参加してみてほしいな、と思います。
(取材・構成 環野真理子)

 

リバネスの長期実践型インターンシップ
学部3年生以上対象。
通年応募 半年以上2年以内で続ける気がある人。
研究が大好きな人、歓迎です。