研究費から広がる可能性と出会い

研究費から広がる可能性と出会い

コラーゲンを中心とした研究を推し進める、株式会社ニッピ、バイオマトリックス研究所。2010年9月に第5回リバネス研究費ニッピ賞を設置し、「コラーゲンを中心とした細胞外マトリックス研究」を研究テーマとして募集した結果、多数の申請書が集まり、その中から3件の申請書を採択した。その株式会社ニッピが、このたび2回目のリバネス研究費ニッピ賞を設ける。研究所所長、服部俊治さんがその想いを語った。


株式会社ニッピ バイオマトリックス研究所

服部俊治さん
東京医科歯科大学にて医学博士号を取得。同大学難治疾患研究所助手を経て、株式会社ニッピバイオマトリックス研究所入社。2008 年同研究所所長に就任。1996 年より、財団法人日本皮革研究所主任研究員も務める。

コラーゲン研究の第一人者

1960年1月26日、日本皮革研究所(現バイオマトリックス研究所)の西原富雄博士が、それまで水に溶けないと考えられてきたコラーゲンの可溶化に成功し、特許を取得した。ニッピバイオマトリックス研究所はそれから50年以上、今日に至るまで、基礎、応用の両面からコラーゲン研究を進めている。特に注力しているのは、動物から抽出したコラーゲンを様々な使用目的に応じて加工生成する技術の開発だ。分野の最先端を行く加工技術と、長年培ってきた基礎的な知識を合わせて、医療、健康食品、化粧品など、多岐にわたるコラーゲンの新しい活用方法を開拓している。常に分野の最先端をけん引するこの研究所は、外の研究者との共同研究にも積極的に取り組んでいる。他の機関や企業へ研究テーマを持ち込んだり、場合によっては研究員を滞在させたり、自社の技術や知識の向上と、常に新しい可能性を追い求めている。

新しいアイデアに驚かされたい

2010年秋、ニッピは自社の研究をさらに加速するためリバネス研究費ニッピ賞を設立した。「コラーゲンを中心とした細胞外マトリックス研究」に関するテーマを募集した結果、全国から様々な申請書が集まってきた。工学分野での応用が多かったことで、コラーゲンと工学との融合に可能性があると考えていた自分たちの仮説が肌感覚を持って実感できたこと、また、自分たちが考えてもいなかった使い方も知ることができたことが収穫だったと言う。前回の採択者である東京大学生産技術研究所助教の尾上弘晃さんは、マイクロマシンを使って細胞をファイバー状に加工することで、血管などの組織を修復する、再生医療に活かす研究に携わっている。彼は成形した細胞を補強する材料としてコラーゲンに着目し、ニッピ賞に応募した。今では定期的にコミュニケーションを取りながら、お互いのノウハウを交換しあう連携を行っている。「コラーゲンの商品開発は我々の強みですが、成形して医療に活かすという発想も、その形成のためにマイクロマシンを使うという発想もなかった」。服部さんは前回の採択者である尾上さんの申請書を採択した理由をこう語る。

特別な審査員たち

リバネス研究費ニッピ賞のもう1つの収穫は、審査のフローにニッピの研究員を巻き込んだことだ。集まってきた申請書は、バイオマトリックス研究所の研究員25名が審査にあたった。次の第13回リバネス研究費ニッピ賞では、あらたに研究開発部門のスタッフが審査に加わる予定だ。審査員たちは、集まってきた申請書ひとつひとつに点数をつける。特に明確に審査方針を決めているわけではなく、「どの研究が面白いか、自分たちが一緒にやってみたいと思う研究を選んでください」と伝えると、不思議なことに高得点を得る申請書はほぼ一致していた。研究員がみな同じ価値観を共有している証拠である。研究員にとっても、研究について客観的に見つめ直す機会として、刺激になった。わかりやすく書いてあるか、自社では試みていない研究内容であるかどうか、そして「熱意があるかどうか」を考えながら申請書を読む。「うまく言葉では言い表せないけれど、研究に対する個人の思い入れが伝わってくる申請書を採択したいね」。

研究費から始まる人と人とのつながり

「産学連携とか、よく言うけれども、研究に産も学も決まった役割はないと思います。企業側は、最終的には出口を作らなくてはいけないけれど、研究する過程においては、研究者同士がお互いに刺激し合って研究を進めればいい」。所属が企業でもアカデミアでも、同じ研究者。お互いの研究の強みを発揮して、可能性を広げるのがニッピ流の産学連携である。第13回リバネス研究費ニッピ賞のテーマは前回と同じ、「コラーゲンを中心とした細胞外マトリックス研究」だ。自分たちが考えてもいなかった新しいコラーゲンの活用方法や医療への応用方法など、驚かされるようなアイデアをもった研究者からの申請書を心待ちにしている。「研究費は自由に使ってください。面白い研究を行っている熱意のある研究者を応援します」。研究に熱いニッピ
研究員との出会いが待っている、リバネス研究費ニッピ賞に、ぜひ応募してみよう。 (文 前田里美)

第13回リバネス研究費 ニッピ賞

募集分野
コラーゲンを中心とした細胞外マトリックス研究。再生医学、細胞生物学、栄養学などの分野。またコラーゲンを用いた材料工学など新しい分野からの応募も歓迎します。*研究はコラーゲンおよびゼラチンに関するものであること。
採択件数 1件
応募締切 2012 年10月31日(水)24時まで
助成内容 研究費上限50万円、および試薬コラーゲン、医療用ゼラチン、もしくはコラーゲンペプチド(当社製品)∼ 20万円程度

ニッピ株式会社 http://www.nippi-inc.co.jp/